実験で新事実「ウレタンマスク」の本当のヤバさ ウイルス専門家、西村秀一医師が徹底検証

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喘息治療や気管支炎の治療でシューシューと出てくる薬剤のミスト(蒸気)を吸い込みますよね。あの状態がミストの発生側です。一方、ミストの受け取り側は、人がつけた状態のマスクではなく、各素材そのものを切り出し、筒の片方に隙間なく張り、反対側から空気を吸わせ、素材を通過してくるエアロゾルの粒子の径(粒子の大きさを表現するもの)ごとの濃度をレーザー粒子計測器で測りました。

(図)西村秀一医師の実験結果より

──上図の「マスク別除去性能」がその結果ですね。衝撃でした。ウレタンマスクの素材である「ポリウレタン」は、5um(マイクロメートル)以下の粒子だと除去率1%以下。ほぼ効果がないことがわかります。

(図)西村秀一医師の実験結果より

そうなんです。逆に不織布マスクは一番小さい0.3~0.5umで90.8%、最大の5.0以上の粒子は99.1%の除去率が確認されました。医療従事者がつけるN95や医療用サージカルマスクはそれ以上に高い値ですが、一般の方が生活圏で使うのは、この程度の不織布マスクで十分機能すると考えます。

ちなみに実験で使用したマスクは、医療用サージカルマスクが当院で使用しているもの。不織布マスクは、VFE(ウイルス濾過効率)が99%カットの表示があった一般的なものです。ポリエステル、ポリウレタンマスクは、一層式でインターネットなどで買えるもの。いずれも、素材表面や内部に特殊な加工がされていないものを選択しました。

不織布マスクを上下左右に、顔に密着させれば、エアロゾルをほとんど吸い込まずに済みます。エアロゾルは科学用語で、口から呼気や咳とともに出て空中にある粒子のすべてを指します。それを出さないこと、吸い込まないことが感染の伝播防止に重要です。

今回は「吸い込み」しか実験はできませんでした。が、互いに不織布マスクであれば出す側も出す粒子が少なく、また吸込み側も吸い込みがかなり少ないわけです。これに2メートルのソーシャルディスタンスがあれば、感染はかなりの確率で防げるでしょう。ただ、マスクの付け方が悪いと、素材のせっかくの性能を生かせません。

マスクのずれや隙間は、過敏になりすぎなくていい

西村秀一(にしむら・ひでかず)/国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター長・臨床検査科長兼ウイルス疾患研究室長。1984年山形大学医学部医学科卒。医学博士。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)客員研究員、国立感染症研究所ウイルス一部主任研究官などを経て、2000年より現職。専門は呼吸器系ウイルス感染症。『史上最悪のインフルエンザ―忘れられたパンデミック』(みすず書房)、『感染爆発―見えざる敵=ウイルスに挑む』(金の星社)、『ワクチン いかに決断するか――1976年米国リスク管理の教訓』(藤原書店より今月再出版の予定)などの訳書や論文多数(写真:西村秀一氏提供)

──布(ガーゼやポリエステル)マスクは、10~20%台の除去率でやはり心もとないですね。

ガーゼマスクは、アベノマスクを使いました。咳や呼気などが体内から運んできて口から出たばかりの飛沫の粒子は大きいので、布やガーゼマスクでも止まります。でも、一方で防御にはあまり役立ちません。まあ、2割でも3割でも阻止してくれることを考えれば、何もしないよりはましですが。

──不織布でも、マスクが不意にずれたり、脇に隙間ができやすいものもあります。

つけ方が大事ということはそのとおりですが、一般生活ではあまり神経質にならなくてもいいです。特別なことをしない限り漏れをゼロにすることは不可能です。確かに顔面とマスクの隙間から入るものもあるけれど、密着の意識を持って着けているのであれば入ってくるのはそう大量ではなくなります。患者が出す1回の咳の中の生きているウイルスの量もそんなに多くはないので、あとは運でしょうか。

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