だが、捨てる神あれば拾う神あり。今度は、『GRAZIA』のライバル誌『マリソル』から声がかかり、スタイリストを務めるように。こちらでも、大草さんのスタイリングは大好評を博した。
「編集者はすてきな人たちばかりだし、編集部の居心地は最高。撮影でイタリアに行かせていただくなど、幸福な1年でした。一方で、私の中でワンキャリアは終わったというか、何かそろそろ大きな挑戦をしなくてはいけない思いも感じてもいました」
そんな矢先、幻冬舎グループが発行する女性誌『DRESS』のファッション・ディレクターにならないかとの依頼が舞い込んだ。
「最初は迷いました。編集長は男性で、しかも美魔女の仕掛け人と聞いて、ちょっと私のテイストとは違うなとも思ったし、ディレクターという肩書も実はピンとこなかったのです」
だが、結果として大草さんは「やる」と決断した。その背景には、やはり大草式「5年ワンキャリア」の理論があった。
「カジュアルを得意とする私のスタイリングスタイルを続けていれば、5年は延命できるかもしれません。でも、その後の5年はどうなるの?と思ったのです」
変わり続けないかぎり、「今の自分」には必ず賞味期限がある――。大草さんは、そう考えたようだ。
「人間は、年を追うごとに中身も外見も変わっていくし、それに従い似合う服装も変わる。それと同じで、仕事に『永遠』なんてない。同じことをやっていると、いつかは人に飽きられると悟りました。そうして、自分がそろそろ次のフェーズに差しかかっているなと気づいたときから、変化しなければいけない、とね」
「大草さんらしくない」とのブーイング
そして、2013年4月、大草さんがファッション・ディレクターを務めた雑誌『DRESS』が創刊した。市場でのその反響は、すさまじかった。
「6割以上が、『今までの大草さんとは違う』だとか『大草さんらしくない』といったネガティブな反響でした。意識的に行った“変化”だったので、ある程度、マイナスのリアクションがあることは想定内でしたが、レビューなどに書かれた酷評をまじまじと見ると、とても傷つきました。3キロくらいやせちゃいましたね」
だが、大草さんは批判にこそ、さらなる進化を産むヒントがあると、あくまで前向き。
「いただいたご批判により、気がついたことがたくさんありました。確かにわれわれは読者像をうまくとらえていなかったし、表現者として言葉が足りなかった。メッセージの伝え方も写真の撮り方も間違えた。最近の『DRESS』をお読みいただければ、私たちが読者の批判とどう向き合ったか、そして、その反省をどのように誌面に反映させたかが、おわかりいただけると思います」
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