「ワクチンの最大のメリットは、感染を予防できること。あるいは感染が原因による病気の重症化や後遺症の発生、死亡を防げること、です。さらに多くの人が予防接種を受けることで集団免疫ができ、新たな感染者を減らせるのもメリットです」(永井さん)
代表的なのが天然痘だ。世界レベルで予防接種を実施した結果、新たに天然痘に感染する人がゼロに。1980年5月にはWHO(世界保健機関)が世界根絶宣言した。
では、新型コロナウイルス感染症のワクチンの有効性はどうなのか。
これについては、ファイザー社とビオンテック社のワクチン(BNT162b2)が95.0%、モデルナ社(mRNA-1273)が94.5%、アストラゼネカ社のワクチン(ChAdOx1)が標準容量で70.4%となっている。一般的な季節性インフルエンザウイルスのワクチンの有効率が50~60%くらいなので、それに比べればかなり高いといえよう。
ただ、「この9割という有効率は誤解しやすいので、注意が必要です」と永井さん。接種した人の9割が発症しないという意味ではないという。
臨床試験では、本物のワクチンと偽薬(プラセボ)を医師も被験者もわからない状態で接種するという二重盲検試験を実施している。その結果、偽薬を打った人は1000人中100人感染症を発症したとすると、本物のワクチンを打った人は10人しか発症しなかった。これが9割の有効性の意味で、1000人接種したら900人が発症しなかったわけではない。
「要するに、例えば、何もしなければ発症率(感染率ではない)が10%だったのが、ワクチンを打つことで1%に減らせたということです」(永井さん)
健康被害にはどれほど注意が必要か
一方、われわれがこうしたメリット以上に気になるのはリスク、つまり健康被害だろう。
実は、ワクチン接種後に起こる望ましくない出来事は、すべて「有害事象」といい、そのなかに「副反応」が含まれることをご存じだろうか。
有害事象にはワクチンを打った後に偶然、起こった症状や病気も含まれる。予防接種では、接種後に生じたすべての望ましくない出来事を有害事象としていったん吸い上げ、そこから、ワクチン接種と因果関係があるものだけを副反応としている。有害事象イコール副反応ではないので、注意が必要だ。
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