三越伊勢丹が「ネット接客」を本気で進める事情

プロの販売員のアドバイスで差別化できるか

そこで、接客のITツールが分散するという課題を解消するためアプリ開発が行われた。開発は、三越伊勢丹MD統括部のデジタル推進グループと、三越伊勢丹ホールディングス子会社のIM Digital Lab(アイムデジタルラボ)が共同で行った。以前からアプリの構想はあったが、1度目の緊急事態宣言を受けて開発を前倒しし、2020年11月25日からサービスを開始。チャットとテレビ会議機能に加え、「個品登録機能」も実装した。

アプリではチャットで販売員に質問(左)、テレビ会議で実際の商品を確認できる(右)(写真:三越伊勢丹)

この個品登録機能によって、オンライン接客で顧客が気に入った商品があれば、販売員がその場で写真撮影してバーコードを読み取るだけで、アプリ内のショッピングカートに商品を登録できる。その後、顧客がクレジットカードで決済すれば、商品が自宅などに配送される。つまり、商品の提案や詳細説明、決済まで1つのアプリ上で完結することが可能になる。

三越伊勢丹では通常のECサイトも展開するが、ECで購入可能なものは現時点で10万種類ほど。伊勢丹新宿本店で扱う全商品の10分の1程度でしかない。ECに商品掲載するには「ささげ」(撮影、採寸、商品説明の原稿執筆)の作業が必要で、膨大な時間と労力がかかる。最初からすべてをそろえるのではなく、顧客の好みに応じて個品登録できれば、EC未掲載の商品を含めてアプリで購入できるようになるメリットも大きい。

「接客では、デジタルは人にはまだかなわない」

将来的には伊勢丹新宿本店で扱う全商品を購入可能にする計画だが、サービス開始時点では14ショップ、300ブランドを取り扱う。1月上旬以降に11都府県に対して2度目の緊急事態宣言が出され、店頭への来客数は激減している。オンライン接客へのニーズが高まっているとみて、アプリで取り扱い可能な商品カテゴリーやショップを拡大していく方針だ。

ネット通販の世界では、アマゾンや楽天などIT大手が大きく先行する。こうしたECが強みとするのが、訪問客のサイト閲覧履歴や購買履歴などから関連性のある商品を提案するレコメンド機能だ。

ただ、三越伊勢丹の三部智英執行役員は「少なくとも接客においては、デジタルはまだ人間にはかなわない」と断言する。販売員が顧客との会話の中からニーズを聞き出し、ビジネスやカジュアルなど利用シーンに合わせたコーディネートを提案するなど、百貨店が従来培ってきた接客ノウハウによって、大手ECと差別化が可能だからだ。

購入する商品がある程度決まっている場合でも「プロの意見を聞きたい、購入へ背中を押してほしいという理由でアプリを利用するお客様も多い」(三部氏)。百貨店では高価格帯の商品が中心であるだけに、同社ではオンライン接客との相性もよいとみている。

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