「ムーンライトながら」違和感大ありの廃止理由 利用客に「行動様式の変化」を促したのは誰だ
ムーンライトながらは指定席確保が困難な人気列車となり、青春18きっぷのシーズンなど多客期には、JR東日本側の臨時列車が183系や189系で続行運転されていた。今振り返ると、この頃がムーンライトながらの全盛期だったのではないかと思う。青春18きっぷを使った旅といえば、「ながら」を真っ先に連想する人も多かったであろう。
しかし、その後は小田原からの自由席扱いもなくなり、JR東海が運行から退き、車両がJR東日本のものへ変更された。さらに臨時列車化され、車両が「踊り子」などの185系へと変遷していった。年々運転日が尻すぼみに少なくなっていき、「いずれ廃止も近い」というのは、鉄道ファンのみならず誰の目にも明らかだった。
違和感大ありの廃止理由
ところで、JRはムーンライトながらの廃止理由として、利用者の「行動様式の変化」と「車両の老朽化」を挙げているが、非常に違和感がある。行動様式の変化とは、夜行列車に人気がないとでも言いたいのであろうが、実際には、ムーンライトながらは指定席券発売と同時に満席になるほどの人気列車だったし、車両の老朽化については185系が引退するだけの話で、車両の老朽化で列車そのものを廃止するなら、踊り子も廃止になってしまう。
JRではまだまだ使えそうな特急車両が次々に引退しているので、車両はいくらでもある。ほかの車両を使えば存続は可能であろう。廃止の本当の理由は、利用客のほとんどが青春18きっぷ+指定席券での利用であり、収益性がよくない。かといって特急化すると青春18きっぷでは利用できなくなり、利用者がいなくなるという狭間で廃止になるのであろう。廃止理由は単に「経営合理化の一環」とでもしたほうがすっきりした気がする。
冒頭に、1975年には北陸周遊券で利用したと述べたが、現在は同類の割引切符がない。国内旅行に鉄道が使いにくくなっているという根本的な構造上の問題もあるように思われる。
報道のなかには高速バスとの競合を挙げた記事も見られたが、そうでもない気がする。どちらかというと、「ムーンライトながら」の指定席券が入手できないので、鉄道利用を諦めて高速バスを利用する人が多いというのが実態であった。「夜のうちに移動したい」という需要は現在もあり、その需要をバスに委ねているという構図であろう。
もし高速バスを引き合いに出すのであれば、高速バスはさらに厳しい環境で運行を維持している。バス1台の定員に対して深夜の乗務員が多数必要で、採算に乗せるのは難しく、東京側では数カ所で集客をして何とか利益を確保して運転している。バス会社にしてみれば、新幹線のような、いわゆる儲かる路線がないので、地道な努力の積み重ねしかないのである。JRが線路という施設を深夜に有効活用していないのももったいない話であり、鉄道会社にもバス会社並みの経営努力をお願いしたいものである。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら