SBI証券の胸突き八丁、最大の武器が今や弱点に

拡大
縮小


 理由はいくつかある。仲介業者は別に本業があり、金融商品販売は片手間になりがちだ。投信などのリスク商品はモノを並べていれば売れる商品ではなく、専門知識は欠かせない。加えて、法令順守の取り組みも必須。仲介業者をうまく管理しなければならず、手間もかかる。

SBI証券固有の問題に絞っても競争環境は厳しい。大手との「ブランド」と「営業力」面で差がある。

実はSBI証券は、以前から対面販売網を展開してきた。SBIHD(当時ソフトバンク・インベストメント)が、03年に買収した業界中堅の旧ワールド日栄証券から引き継いだ直営23店だ。ただ、ネットで圧倒的なSBI証券も、リアルでの知名度は低い。特にネットを使わない高齢者に社名が浸透しておらず、これまで対面営業経由で獲得した口座数はわずか5万件強にとどまる。

大手証券は、コストはかかるが自前で大量の営業員を配置、知名度も一日の長がある。営業員は厳しい目標を課され、販売に当たっている。これに“他力本願”ともいえる仲介業で挑むのは、やや心もとない。

「大手証券の顧客は50代以上の高齢者が中心。対してSBIの顧客はネットで情報を取り、自分で判断する20~30代が多い。数十年経てば、今の構図は変わる」。北尾氏はそんな未来図を描くが、実際にそうなるにしても時間がかかる。ネットの武器を最大限に生かして成功を収めた“革新者”は今、ネットの弱点に成長の頭を押さえられている。

■SBIホールディングスの業績予想、会社概要はこちら

(武政秀明 撮影:鈴木紳平 =週刊東洋経済2010年4月10日号)

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT