プリクラの元祖・セガ、「20年ぶり再参入」のわけ 業界初の機能引っ提げ独占市場に風穴空けるか

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フィズは市場調査から数年の開発期間を経て、2020年7月から一部で先行して設置。10月から本格展開を始めた。12月までの設置台数は目標を達成し、スマホアプリの会員数や、リピーターの数は想定以上だ。セガは「フィズでいきなりシェアナンバーワンになれるとは思っていないが、良いところまで戦えると思っている」(広報)と自信をもつ。

セガの参入に競合も身構えている。プリクラ最大手でほぼ独占状態にあるフリューの三嶋隆社長は2020年11月の決算説明会で「(セガのプリントシール機は)動画など新たな機能を大量に備えている。どの機能が女子高校生に人気があるのかということを分析した上で、新商品の開発に反映したい」と対抗心を燃やす。

市場を独占してきたフリューに一日の長

フリューは競合が撤退していく中、1社で市場全体のニーズに応えるため、多様なデザインや機能の特徴を打ち出した機種を展開してきた。高校卒業と同時にプリントシールからも「卒業」する利用者を食い止めようと、シンプルで大人っぽい機種の展開や、社会人層に人気の高いアイドルグループとのコラボなどの施策を打ち出してきた。

その結果、画像取得用サイトの有料会員数は150万人を超える。フリューの2020年3月期のプリントシール事業と、画像取得用サイトなどのコンテンツ・メディア事業の合計の売上高は189億円、営業利益は54億円で利益率は24%と高い水準だ。

セガがプリントシール機でシェアを拡大するためには、こうした利用者のニーズに応えつつ、フリューと差別化を図ることが不可欠だ。セガが不在だった2000年代以降もヒット作を生み出してきたフリューは、現在も年間複数台の新機種を投入しており、若年女性が求めるものを汲み取るノウハウについても熟知している。

これに対して、セガも「これまでのアミューズメント機器の運営で得た知見を生かし、フィズについても利用者を飽きさせないための季節ごとの施策やアップデートなどを行っていく」(広報)というが、変わりやすいトレンドに対応するためには継続的に新機種を出す必要がある。

親会社のセガサミーホールディングスが手放したゲームセンター(記者撮影)

もっとも足元では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、ゲームセンターの集客は低迷し、開発当初の想定とは市場環境が異なる。セガの親会社であるセガサミーホールディングスもコロナ禍で打撃を受け、2020年11月にゲームセンター事業の売却や希望退職の実施を発表。利益柱であるパチスロ・パチンコ機販売も苦戦しており余裕はない。

市場拡大の余地は少ないが、競合にない強みを持つプリントシール機を生み出すことができれば、市場を活性化することにもつながる。元祖プリクラメーカーとしての意地を見せられるか。

田中 理瑛 東洋経済 記者

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たなか りえ / Rie Tanaka

北海道生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。報道部、『会社四季報』編集部を経て、現在は会社四季報オンライン編集部。食品業界を担当。以前の担当は工作機械・産業用ロボット、ドローン、医療機器など。趣味は東洋武術。

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