河井被告有罪で問われる菅、二階氏の政治責任 混迷気味の議員辞職問題、リーダー失格の声も

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ただ、克行被告は法廷闘争で徹底抗戦を続ける構えで、「元法相でもあり、河井氏の後見人だったとみられる菅首相も含めて、議員辞職での説得は困難」(自民選対)との声が多い。辞職しなくても10月までに行われる衆院選で決着がつくからだ。

これに対し、案里被告の議員任期切れは2025年7月だ。もちろん、近い将来に議員辞職か失職となる可能性が大きいが、それまでは自民党への批判がやむことはない。

北海道、長野補選はダブル敗北が濃厚

4月25日の統一補選で自民が敗北することによる、政権への打撃を減らしたい思惑もにじむ。すでに補選実施が確定しているのは、吉川被告の議員辞職に伴う北海道2区と、2020年末に急死した立憲民主党の参院議員・羽田雄一郎・元国土交通相の参院長野選挙区だ。

自民党執行部は、北海道2区では候補擁立を見送る不戦敗の方針を固め、参院長野選挙区も「候補は立てるが、相手が弔い選挙なので、勝てない」とあきらめ顔だ。つまり、現状では「ダブル敗北」となるのは確実。菅、二階両氏の責任も問われるが、下村博文政調会長が年明けに「ダブル敗北なら政局になる」と発言し、二階幹事長の逆鱗に触れて釈明する騒動が起きている。

そもそも北海道2区の不戦敗は、補選敗北のダメージを減らす姑息な手法だ。そこで、執行部が視野に入れているのが案里被告の議員辞職で参院広島選挙区の補選を追加することで、「1勝1敗1不戦敗」に持ち込もうという思惑だ。

参院広島選挙区は定数2で、案里被告と一緒に当選したのは立憲民主党の森本真治氏。仮に補選が実施されて立憲民主が野党統一候補を擁立して議席を獲得しても、2025年の参院選では森本氏との間で公認争いが起こるため、「勝てる候補は出せない」(自民県連)とみられているからだ。

そのうえ、自民党が強い広島で衆院3区候補に公明の斉藤氏を立てるかわりに、参院広島選挙区で岸田派の候補を立て、その候補を公明党が全面支援することが「暗黙の条件」(自民県連)でもあるようだ。

まさに、各党が入り乱れる政局がらみの奇々怪々な動きともみえ、野党陣営からは「将来の公認争いなど考慮せず、参院広島補選で勝負しなければ、次期衆院選での政権交代などありえない」との声が出始めている。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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