欧州4カ国がタッグ「夜行列車」路線拡大の勝算

背景に環境問題、成功のカギは「ライバル登場」

だが、普通に考えれば、日中に5~10時間以上もかけてわざわざ列車を使って移動する人がどれだけいるのか、という話になる。鉄道の旅そのものを楽しむ人や、よほど環境問題に真剣に取り組んでいる人はさておき、丸1日を移動に費やせばせっかくの休暇を1日無駄にしてしまうと普通なら考えるだろう。ビジネスであれば、なおさら難しい話になる。

寝台車でくつろぐ乗客。翌朝、目が覚めたら目的地というのは、夜行列車の大きな魅力の1つだ(筆者撮影)

しかし、夜行列車であれば、寝ている間に移動して、翌日は朝から活動することが可能になるため、この移動時間でも大きな問題にはならない。もちろん、飛行機で移動してホテルに宿泊すればいいと考える人もいるだろうが、その両者を天秤にかけ、料金や効率性の面で大差がない場合、選択を決定づける最後のキーワードになるのが、今のヨーロッパでは「環境問題」ということになる。

つまりTEE2.0計画は、1950年代に定められた当時のサービスをそのまま復活させるという意味合いではなく、「TEEというブランド」を新時代の国際間鉄道ネットワークのアイコンとして使用するもので、かつてのハイクラスな昼行ビジネス特急とは切り離して考えなければならない。むしろ新時代のTEE 2.0では、夜行列車こそ本命と言えるかもしれない。

かつてのTEE時代との違い

だが、今回4カ国の鉄道が手を組んで進めようとする計画は、夜行列車網の充実に向けた動きではあるものの、TEE2.0とは別であり、そのアプローチも少々異なっている。

今回の件は、オーストリアのナイトジェットを各国がサポートして乗り入れてもらうもので、あくまでオーストリア連邦鉄道が主導する。一方、TEE 2.0では、各国から完全に独立した国際鉄道運行会社を設立し、各国鉄道はチケット販売など、乗客から得た収入によってサービスを買う、という仕組みが提案されており、運営形態は大きく異なる。

ただ、いずれにせよかつてのTEE時代と大きく状況が異なるのが、オープンアクセスによる参入自由化である。

1950年代にTEEが計画された当時は、お互いが協力して都市間を結ぶ国際特急列車を走らせることが最終目的で、一時は各国鉄から切り離された独立組織が運行するという、TEE2.0と同様の案もあった。現代におけるオープンアクセスによる事業参入と考えは同じであるが、オープンアクセスという言葉もなかった当時、各国の鉄道会社からの反対により実現しなかった。

結局、各国の鉄道会社(国鉄)がバラバラに参加した結果、車両やサービスはそれぞれが用意した統一性のないものとなってしまった。大衆化という流れの中で、オール1等車という規約そのものが時代遅れとなっていったこともあり、その後はTEEというブランドだけが独り歩きし、35年で寂しく幕を引く結末となってしまった。

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