欧州4カ国がタッグ「夜行列車」路線拡大の勝算 背景に環境問題、成功のカギは「ライバル登場」
オーストリア連邦鉄道、ドイツ鉄道、スイス連邦鉄道、フランス国鉄の4社は2020年12月、夜行列車「ナイトジェット」の運行に関して、4つの新しい路線を開設する準備を進めるとともに、今後新たな路線やサービス開発に継続して協力していくことに合意し、契約書に署名したと発表した。
各国鉄道会社のCEOが署名した後の記者会見には、オーストリアのレオノール・ゲヴェスラー連邦気候行動・環境・エネルギー・モビリティ・イノベーション技術大臣、ドイツのアンドレアス・ショイアー運輸相、フランスのジャン=バティスト・ジェバリ運輸国務長官も出席した。
具体的には、まず新規開設路線として、以下の4つが計画されている。
2022年12月:チューリッヒ―ローマ
2023年12月:ベルリン―ブリュッセル/パリ
2024年12月:チューリッヒ―バルセロナ
これらの計画は、ドイツのショイアー運輸相が昨年9月に提案した今後の国際間鉄道ネットワークサービス「トランス・ヨーロッパ・エクスプレス(TEE)2.0ネットワーク」計画と似ている部分があり、その第一歩と考えられなくもない。
なぜ今「TEE」?
「TEE」とは、1957年に当時のオランダ国鉄総裁の提案により、西欧諸国が参加して実現した国際特急である。航空機や自動車交通に対抗するべく、当時としては画期的だったオール1等車の特別な編成で運転されたビジネス特急だった。TEEは、日帰りで出張するビジネスマンをターゲットにした昼行列車で、夜行列車の設定もなかった。
ではなぜ、今になってTEEの復活を思わせる「TEE2.0」なのか。そして、夜行列車とどんな関係があるというのか。
この話の行き着く先は、昨今クローズアップされている環境問題と無縁ではない。ショイアー運輸相は、環境負荷の小さい鉄道輸送へのシフトを促すことで、昼行・夜行問わず、主要都市間を鉄道で結ぶことの重要性を唱えている。これまでの各国における一連の流れを見ても、夜行列車の復権が環境問題にリンクしていることは明白だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら