今の株式市場は「少しカオしてる」かもしれない 「天井形成時の乱高下」を表す言葉を作ってみた

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筆者は、昨年12月辺りから、こうした短期株価調整シナリオを繰り返し唱えてきた。だが、市場はいったん「上がるから買う、買うから上がる」状態に陥るとエスカレートしがちで、「買われ過ぎがさらに買われすぎになり、もっと買われすぎになる」ということがしばしば生じる。実際、先週半ばまでは、そうした勢いばかりの株価上昇が、日米ともに進んでいた。

今は小さく「カオしている」状態

だが、直近はどうも変調をきたしているようだ。株式だけでなくさまざまな市場において、投資家の心理が「もっと上がる」と「もう下がる」の狭間で不安定に揺れ動いており、不安定さが増している。昔から「天底荒れる」との格言にもあるように、市況が天井と大底を形成する際には、しばしば見られる現象だ。市況の方向性が変わるときには、強弱感が交錯し、短期的に大きく上下動するからだ。

ただ、そうした混乱は、特にパニックやバブルが市場に大きく生じているわけではないから、「カオス」(混沌状態)と呼ぶほどではなく、「ミニカオス」くらいのものだろう。カオスになることを示す動詞を「カオす」と呼ぶとして、小さく「カオしている」ということだ。

実際、このコラムを読んでくれている賢明な読者の皆さんなら「株式市場がちょっとカオしている」とすでに感じているはずだ。市況全般では、日経平均株価が1月14日に、一気にザラ場高値2万8979円と2万9000円に迫る動きを見せた後、週末の15日は2万8519円で引けている。

加えて、アメリカ市場では、15日の現物株の引け後に株価指数先物が一段と崩れたため、シカゴの日経平均先物は2万8210円とさらに安くなって週を終えている。そのアメリカでも、NYダウは14日に3万1224ドルと史上最高値を更新したが、15日は一時3万0600ドル手前まで押し、結局、3万0814ドルで引けている。

さらに個別業種・銘柄の物色動向も眺めると、半導体株の乱高下が目に付いた。14日までオンラインで開かれていた世界最大級の電子機器見本市CESでは、アメリカのアドバンスト・マイクロ・デバイスやインテルがCPUの新商品を発表。さらに13日には、インテルが「CEO(最高経営責任者)の交代を2月に行う」と発表、これが半導体株全般の急伸を引き起こした。

それを受けて日本でも、東京エレクトロンやアドバンテストなど半導体製造装置株が上昇した。この2社は値がさ株で、日経平均株価に与える影響が大きいため、NT倍率(日経平均÷TOPIX)を上振れさせるという「おまけ」がついた。

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