安河内:私は文科省の委員をやっていますが、あえて言わせていただくと、4年間もまったく前倒しをしないで教えるのは、無理だと思います。たとえば3年生、4年生はアクティビティでいいと思うのです。ただ、3年生で歌と踊りをやって、4年生でゲームをやって、5年生でまだゲームをやっていたら、いくら子どもでも飽きますよね。そこで、5年時、6年時に週に3時間やって、中1が始まるまで中1の前倒しをしないで何をやるんだという話になります。もちろん、前倒しのやりすぎはよくありませんが。
水野:アルファベットも教えずに何をやるのか、ですよね。
安河内:これは私個人の意見ですけども、中1の内容を5年、6年くらいまで前倒ししなければ、子どもたちの持つ知的欲求に応えられないと思います。
水野:今の中学の英語教育をそのまま前倒しするということは、やはり文法から入って、ということになりませんか。
安河内:内容を前倒しするわけであって、教授法を前倒しするわけではないですね。たとえばbe動詞、一般動詞、肯定文、否定文、疑問文の作り方などを教えないで、5年生でも6年生でも週3時間、ゲームをやりましょうというのは、日本のEFL(English as a Foreing Language=外国語としての英語)環境だと逆に非効率だと思うのですね。
ただし、文法用語を早い時期から導入すると、子どもたちがまたアレルギーを起こしてしまうので、たとえば問いかけの文を作ってみようというふうに、文法用語は使わずに、言葉の成り立ちとしての文法は導入してやるべきだと私は思います。
水野:ただ、2020年からはそれをテストするということですよね。そうなると、文法用語を教えずに、なんとなく感覚で教えるものをどうテストするのか、という問題もあると思います。勘がいい子ならそれで点数も取れるけれども、勉強の仕方もわからない、自習のすべもない、内気な子は、試験対策さえできないということになりませんか。
学校というのは一定の科目があって、それに対して努力をして、達成すると成績がつく、ということで成り立っていますが、それが根底から覆されませんか。
安河内:システムについては工夫する必要がありますね。その前提として、文字教育は5年生からしっかり導入するべきだと思います。文字教育がない中でどうやって評価するのかという問題と、科目とするならば、ある程度の文字を使わなければ子どもたちの知的欲求には応えられないということがあります。文字を使うのであれば、漢字テストだってあるわけですから、ある程度のテストも必要だと思います。
ただし、特に気をつけなければならないのは、急に大量のテストを課すことを避けるということ。中学でも英語嫌いになるのは、急激に大量の課題を与えてテストすることが一因ではないでしょか。多少のペーパーテストや簡単なリスニングテストなら、私はかまわないと思っています。緩いテストです。
水野:そうなると、やはりまた最初の話に戻ります。そもそもの小学校の英語教育導入の目的が「コミュニケーションをしようとする態度を養う」ということですが、それはアルファベット教育やペーパーテストとどういうふうに関係するのでしょうか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら