菅首相、言い間違え連発で招いた「自滅の刃」 反転攻勢狙った会見やメディア出演が逆効果に

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菅首相の強い意向で継続していたいわゆるビジネストラック(ビジネスベースの国際的な人の往来)が、自民党内からの突き上げで一時停止となった顛末も含め、延々と続くコロナ対策の迷走劇が緊急事態宣言に対する国民の不安と不信を拡大させているのは間違いない。

さらに、国民が一番聞きたい「本当に2月7日までに感染は下火になるのか」「もし、そうならなければ次の対策はどうなるのか」といった点についても、13日の首相会見では質疑そのものがなかった。

質疑がなかったことについて、与党内では「菅首相がテレビ出演などで『仮定のことは考えない』と発言したことが原因」(公明党幹部)と見る向きが多い。ただ、「最悪の事態にどう対処するかが危機管理の要諦。出口戦略を示さない限り、国民の疑心暗鬼は高まるばかり」(首相経験者)なのは明らかだ。

施政方針演説は「経文」のような内容に

菅首相は18日午後、就任後初の施政方針演説を行うが、すでに一部メディアはその内容を事前報道している。それによると、菅首相は「1日も早く感染を収束させ、感染が始まる前と同じような生活や賑わいのある街角を取り戻すため、全力を尽くす」「国民の協力をいただきながら、私自身も戦いの最前線に立ち、知事とも連携しながら、難局を乗り越えていく決意」など、「経文のような決意表明」(自民若手)を述べる考えだとされる。

さらに、「ワクチンを対策の決め手と位置づけ、安全性や有効性の審査を行ったうえで、できる限り2月下旬までに接種を開始できるよう準備を進める」と、ワクチン頼りの姿勢を明言するが、「あとは各省庁の作文の羅列になる」(政府筋)とみられている。

こうした対応では、著書『政治家の覚悟』のタイトルのような姿勢はどこかに消え、座右の銘の「意志あれば道あり」にも疑問符が付く。「主要先進国のすべてのリーダーが対応に迷う難しいコロナ対応」(首相経験者)なのは誰もが認めることだが、「いったん決めたらぶれない政治家」を売り物にしてきた菅首相に対して「平時ではなく、有事ということを認識し、過去へのこだわりを捨てて柔軟でしなやかな対応をすべきだ」(同)との声は高まるばかりだ。

2020年1月15日は日本で初めてコロナの感染者が確認された「記憶に残る日」(政府筋)だ。それから1年後の15日、菅首相は日課である散歩の後、午前の定例閣議やコロナ対策の打ち合わせなど淡々とこなした。ただ、同日午後には自民党衆院議員で菅首相の盟友でもあった吉川貴盛元農水相(議員辞職し、自民党を離党)を東京地検特捜部が収賄罪で在宅起訴。併せて、東京都のコロナ新規感染者が再び2000人を超えるなど、永田町内外のざわめきは収まらない。

そうした状況下、週明けからの国会論戦でこれまでと同様のメモ棒読みを続ければ、国民から「覚悟のない宰相」の烙印を押されることになる。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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