モノライン保険会社の危機とCDSによる信用収縮の連鎖の衝撃 米経済を揺るがすサブプライム問題

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 この間、著名な投資家のウォーレン・バフェット氏は自らが新規にモノラインを設立したうえ、地方債に関わる保証8000億ドル分の再保険を引き受けると提案したが、一時的に資本が入るとしても、地方債で受領した保証料の50%増しの手数料の引き渡しを求められることを、保証会社が断たっため、頓挫した。
 
 MBIAは5年以内に、地方債の保証ビジネスと証券化商品の保証ビジネスの会社分割するとしているが、いずれにせよ、後者に対する十分な資本注入が確保されるスキームとならない限り、市場からの評価は得られない。

信用収縮の連鎖が始まる

モノラインの問題の重要なポイントは、それがクレジットクランチ(信用収縮)の連鎖を引き起こすことだ。既に、米地方債のスプレッド(注7)は米国債に対して大幅に上昇しており、州の事業債のうち、長期債ではあるが、オークション方式でレートを決め短期で転がしていくARS(オークション・レート・セキュリティ)の借り換えに入札がつかなくなるという問題が生じている。ARSを巡る問題点の一つとして、ARSがミューチャル・ファンドに組み込まれているため、AAAの格下げで保有が規制上の理由から困難になり、ヘッジ・ファンドに続いて、さらなる大量の売却が見込まれることになる。

また、さらに、保証会社に破綻が生じた場合の最大の問題がCDSのカウンターパーティ(取引相手方)にリスクが噴出することである。既に、CDSのスプレッドは、足元で国内A格でも40~60ベーシスポイント(0.4~0.6%)とハネあがっているが、保証会社に破綻が生じ、金融機関がそれにより、損失を被ると、クレジットクランチが生じ、それによって、一般の事業会社を含む信用状況が悪化し、さらに、金融機関に損失が生じるという悪循環となる。

保証会社自体がCDSを再保険に出しているケースもある。CDS市場はISDAが把握しているだけで想定元本(CDS取引がカバーの対象にしている契約額)が約45兆円ある。ネットのクレジット(一方の当事者が受け渡しする額の差し引きネット)は5兆円~10兆円などさまざまな推定値があるが。CDSの売り手にはヘッジファンドが多いとされる。

OECDの調査によると、CDOの買い手も46.5%がヘッジファンドである。かつてのLTCM(ロングタームキャピタルマネジメント 注8)のような大規模なヘッジファンドは少ないが、中堅のヘッジファンドに破綻が相次ぐ可能性もある。
 
 GCIキャピタルの山内社長は「相対取引のため、取引金額の実態はもっと多いと考えられる。損失の連鎖が始まれば、金融機関やヘッジファンドが損切りに走り、自虐的なリスク管理からさらに信用収縮が進むという1998年当時のような信用収縮がありうる」と指摘する。
(東洋経済オンライン 大崎明子)

【用語注】
(注1) Collateralized Debt Obligation、金銭債権で構成される資産を担保にして発行される証券
(注2) Structured Finance証券化やデリバティブなど新しい金融技術を使った仕組みによる資金調達
(注3) Asset Backed Securitiesキャッシュフローを生むさまざまな資産を担保にした証券
(注4) 証券化商品であるABS(資産担保証券)を担保にCDOを発行する、二次証券化商品
(注5) Residential Mortgage Backed Securities 住宅ローンを担保に発行される証券
(注6) Credit default swap 2者間の相対契約。買い手と売り手が存在し、買い手がある企業(参照企業と呼ぶ)に対し、融資したり社債を買ったりして当該企業の信用リスクをとっている場合、買い手が売り手に定期的に保険料を支払い、売り手は当該企業がデフォルト(債務不履行)した場合に、買い手の損失を補償するという、主に買い手のリスクヘッジに使われる仕組み
(注7) 信用リスクプレミアム、リスクフリーレート(通常国債)との利回り差
(注8) 1998年に破綻した大手ヘッジファンド。その破綻が世界的信用収縮を招いた

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