「224人の子の脳」3年追って見えたスマホの脅威 成績が低下してしまう真の要因はどこにあるか
実験方法の概略ですが、一度目のMRI検査時に、その時のインターネット習慣をアンケート調査で調べました。そして3年後にもう一度MRI検査を行い、3年間の脳発達に伴う大脳灰白質体積の増加を計算しました。インターネット習慣に関しては、「使わせない」「まったくしない」「ごくたまに」「週に1日」「週に2~3日」「週に4~5日」「ほとんど毎日」の7群に分けました。そして1回目に調査したインターネット習慣が3年間の脳発達に与える影響を統計的に検証しました。
すると1回目の検査時では、大脳灰白質体積に群間差はなかったのですが、3年後にはインターネット習慣に応じた発達の差が認められたのです。
図2をみてください。これは個人のデータをプロットした(グラフの中に書き込んだ)ものです。点線は平均値を示します。横軸はインターネット習慣(7群)、縦軸は3年後の全脳の灰白質体積(cc)の増加を表します。統計処理にあたっては、家族の数、家庭の年収、両親の教育歴、居住地、睡眠時間、頭蓋容積の影響が結果に反映されないようにしています。
データ解析について詳細に説明すると専門的になりすぎるので、具体的なことを知りたい方は原著論文(文献1)を読んでみてください。
毎日ネットを使用する子どもの脳
インターネット習慣がない、あるいは少ない子どもたちは、3年間で全脳の灰白質体積が増加しているのに対して、ほぼ毎日インターネットを使用する子どもたちの全脳の灰白質の発達に注目すると、増加の平均値はゼロに近く、全脳の灰白質の発達が3年間でほぼ止まっていることがわかります。
もう一度図1をみてください。大脳灰白質の発達が特に悪くなっている領域に色がついています。前頭葉、側頭葉、小脳など多くの領域に悪影響が出ていることが読み取れます。
もちろんこのデータはインターネット習慣との関係をみたもので、スマホ習慣との関連を直接調べたものではありません。ただ内閣府のデータをみても中学生の65.8%、小学生では40.7%がスマホを使ってインターネットを利用していることがわかっていますので、スマホ使用との関係があることが推測できます。
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