コロナ前後のマンション価格の動きを振り返っておこう。自粛期間中の4・5月は先行き不安の投げ売りが出て、中古マンションの成約価格は下落した。しかし、この投げ売りは2か月で終わった。その後は、コロナ前の価格に戻り、今はその価格よりも高くなっている。
新築マンションの方は、供給者側が大手寡占に近くなったこともあり、数か月間販売を我慢することは体力的にできる。本気度の高い顧客だけの来訪はコストを抑えながら効率的な販売を可能にした。販売戸数は昨年と比して大幅減になるものの、慌てる様子は中堅以下にしか見られない。この状況下では、値引き販売などが行われる段階にはない。
そんな折、中古の販売在庫は減りつつある。投げ売り処分されたものは、郊外・駅遠などの立地条件の悪いものが多かったために、残された在庫価格は上昇した。また、見ず知らずの人が内覧するのを敬遠する気持ちから販売を辞める物件が増えた。こうして在庫が減少しながら、在庫価格は上がった。
こうしたことは以前にも起きている。リーマンショック後、新興系のデベロッパーの多くが資金ショートして倒産した。この結果、新築マンション供給が前年の1/3に急減し、あまりの新築物件の少なさに中古マンションが売れて、在庫が減りながら値上がりを始める事態が起こる。リーマンショックから1年しか経っていないのに起こった「まさかの値上がり劇」だった。こうして、リーマンショックから2年後には元の価格に戻っていた。
不動産価格はローンで決まると書いたが、需給バランスはこうした在庫減の時に価格に影響しやすい。在庫が減ると、価格は上がる方向に動きやすい。これが最も2021年に起こりそうな状況にあると理解した方がいい。
新築分譲戸建も売れている
一方、戸建市場も活況を呈している。新築分譲戸建は年換算で首都圏で7万戸に迫るハイペースで売れていて、毎月在庫が1000戸ほど減り続けている状態にある。新築分譲マンションが2019年の供給戸数が3万戸強なので、既に戸数ベースで2倍の取引量が一大マーケットになっている。
これだけ売れているものの、新築の着工戸数は4月以降前年同期比で17%マイナスとなっている。こうなると、在庫が少なくなる一方で、販売期間が短くなり、竣工前に売れる事態が増えている。一般的に売れ行きが悪く、建物が竣工してしまうと売出価格の値引きが始まるが、実質的な売買価格の上昇が既に始まっている。
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