日本と中国の「IT化」に大差が生じた決定的要因

大成功してしまったがために重い遺産を抱えた

新型コロナウイルスの感染者数把握作業では、当初、FAXで情報を送り、手計算で集計していました。この作業が保健所に過大な負担をかけたので、新システムであるHER─SYSが5月末に稼働を始めました。しかし、このシステムが使いにくいことから、東京や大阪は利用せず、FAXに頼り続けました。

霞が関の省庁間では、システムの仕様の違いから、コロナ対策を協議するテレビ会議ができませんでした。やろうとすると、複数の端末が必要でした。

他方で中国は、最新技術を駆使して新型コロナウイルス感染拡大を阻止しました。台湾も、「デジタル担当大臣」のオードリー・タンの指導で、マスクの配布などを見事に処理。

コロナという異常事態に直面して始めて、日本がこうした国とは比較できないほど遅れていることが分かったのです。

中国にはない「レガシー問題」を引きずる日本

リープフロッグは更地に建物を建てるようなものです。古い建築物が残っていると、そこを更地にするために費用がかかります。解体費用だけではありません。人が住み、事業が行われていれば、立ち退きのために、厄介な交渉が必要になるでしょう。

実は、コンピュータシステムにおいても、「古いシステムが残って稼働し続けているために、新しいシステムに移行できない」という問題があるのです。これは「レガシー問題」と呼ばれるものです。

日本は、メインフレームコンピュータの時代において、世界のトップにいました。ところが、その当時の技術体系にうまく対応しすぎたために、その後に生じたコンピュータシステムの変化に対応することができなかったのです。

コンピュータに要請される機能はどんどん増えたので、1980年代の仕組みそのままで稼働しているわけではなく、その後の要請に対応しています。

ただし、全体を一新したのではなく、基本的な仕組みはそのままにして、それを部分的に修正したり、新しい機能を追加するなどの方法で対応しました。つまり、つぎはぎで対応してきたのです。

複雑になりすぎたコンピュータシステムを改善しようとしても、どこかをいじるとどんな影響がでるかが分からず、「怖くて手が出せない」という状態になってしまったからです。そのため、何とか古いシステムを使い続けるという状態が続いてきました。この結果、「コンピュータシステムの内容が複雑怪奇なものとなり、全体としてどうなっているのか、誰にも捕捉できない」という状態になってしまったのです。

こうしたシステムでは、プログラム言語も、1980年代に使われていたCOBOLという言語がそのまま使われています。プログラム言語は、その後変わったために、いまではCOBOLを理解できるエンジニアは高齢になってしまいました。そうした人々は、やがて退職していきます。そうすると、現在のコンピュータシステムの中身がどうなっているのかがまったく分からないという事態が生じかねないのです。

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