マンション・戸建て「コロナ特需」のカラクリ 不況恐れた業界の予想は良い意味で裏切られた

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住宅の需給バランスも活況を演出する。2020年の首都圏新築マンション供給戸数は2万強と、モデルルームの閉鎖を受けて例年の3万戸水準を大きく下回る見込みで、限られた新築物件に申し込みが集中している。需要旺盛な中古物件も「今は売り時でない」と考えた持ち家の買い替え層が売り出しを控えたこともあり、在庫は減少の一途をたどる。

十分な在庫の確保が難しくなりつつある

逼迫しているのはマンションだけではない。横浜市地盤のハウスメーカー「ピーアイコーポレーション」の折田浩一代表取締役は、「子供がいない世帯でも戸建てを求めるほど引き合いは強いが、販売できる物件が少ない」と話す。緊急事態宣言前後に用地取得を一時見合わせたため、購入希望に対して十分な在庫の確保が難しくなりつつあるという。用地取得は夏以降に再開したが、引き渡しが可能な物件が増えるのは「2021年春以降になるだろう」(折田代表)。

むろん、コロナ禍は雇用や所得を蝕んでおり、誰もが住宅購入に動けるわけではない。それでも、金融業やIT企業など所得が高く、在宅勤務への移行も早い業種への影響は比較的軽微だ。住宅市場の活況は、所得や雇用への不安を払拭できるこうした業種の従事者による需要膨張によって支えられている。

住宅ローン金利はコロナ禍後も低水準で推移し、今や変動金利ならネット銀行では0.4%台の商品も登場。住宅金融支援機構が2020年7~9月に行った「住宅ローン貸出動向調査」によれば、金融機関の71%が「今後も住宅ローンの新規貸し出しに積極的だ」と答え、貸し渋りの気配もない。

予想外の快走で幕を開けた、住宅業界のニューノーマル。2度目の緊急事態宣言発出という状況下、住宅市場は新たな局面を迎えている。

『週刊東洋経済』2021年1月16日号(1月12日発売)の特集は「激動 マンション・住宅」です。
一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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