サンリオ、「物販」シフトへの真意 ライセンスビジネスはもはや限界なのか
辻社長の発言に加え、ライセンスビジネスの推進役だった鳩山玲人常務(40)を欧州専任としたことも、ライセンス事業から物販へ事業をシフトするという投資家へのメッセージになった。説明会に出席した外資系証券のアナリストからは、「ライセンスビジネスで営業利益300億円を軽く超えると予想していただけに、物販強化となるとそう簡単にはいかなくなる」と、失望感を表す声が聞かれ、株安の引き金となった。
もともとサンリオは、ギフト商品の販売会社として誕生し、物販が中核事業だった。1990年代後半には、女子高生やOLを中心にキティファンが増え、キティグッズを身につける“キティラー”現象が巻き起こり、国内物販が急拡大。売上高を1500億円、営業利益を188億円(98年度)まで伸ばした。
キティちゃんの”アレンジ”を可能に
だがブーム一服後は、アニメやゲームキャラクター人気、さらにゆるキャラなど新興キャラクターの登場で、サンリオキャラクターのグッズ販売が低迷。物販店舗の維持が重荷になり、2003年には営業利益は20億円と、ピークの10分の1近くにまで落ち込み、その後10年もの低迷期に入ったのである。
打開策として力を入れたのが、ライセンス事業だった。ライセンスの場合、サンリオのキャラクターを使用したい企業と契約を締結し、商品企画やデザインを認可する一方、一定比率の手数料を得るビジネスである。店舗の投資や在庫負担がないため、収益性が高いのが特徴だ。
このライセンスビジネスを推進したのが、今は亡き邦彦副社長だ。三菱商事やローソンで活躍してきた、当時30代の鳩山玲人氏を招聘。手始めに、直営店が少なく事業転換しやすい欧州で、物販からライセンスビジネスへの抜本的な事業転換に着手した。
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