サンリオ、「物販」シフトへの真意 ライセンスビジネスはもはや限界なのか
サンリオのライセンスビジネスは、その自由度の高さを武器に、取引先を順調に拡大。ハローキティであれば、通常のキティだけでなく、赤ちゃんやドクロの姿にしたもの、さらにシルエットやリボン部分のみの使用など、多様なアレンジが可能な契約とし、多くの会社に受け入れられた。「ZARA」や「H&M」などの世界的なファストファッションともライセンス契約を結ぶことにも成功した。
そのかたわら、不振が続いていた直営店やホールセールでの販売を抑制し、ライセンスビジネスに資源を集中。それまで鳴かず飛ばずだった欧州は一変し、稼ぎ頭へと大変貌を遂げたのである。欧州に続き、米国やアジアでも同様の事業転換によって、営業利益は200億円を超すまでに回復し、ライセンス事業は連続最高益の立て役者となっていった。
ブーム後、どうするか
そんな、収益柱のライセンスを差し置いての、今回の物販強化発言。真意はどこにあるか。サンリオでは、「言葉足らずだった面もあるが、柱のライセンスを縮小する気は全くない。むしろ海外ではライセンスを拡大するための物販強化だ」と、説明する。物販強化の発言が出た発端は、今まで高収益で業績を牽引してきた欧州の変調にある。ライセンスビジネスで最初に成功した欧州だが、実は10年度をピークに、近年は売上高・利益ともに、下降線をたどっているのだ。
社内には以前から、「現状のライセンス事業で未来永劫、成長しうるのかという議論があった」(辻社長)。ライセンスビジネスは、取引先に依存したビジネス。キャラクターがブームになれば、店舗や商品開発といった先行投資がほとんどかからないので、収益性が高く急成長する。ところが、取引先から一度見放されれば、一瞬で利益を失う可能性もある。欧州の落ち込みは、米国、アジアと続けて開拓してきた地域の将来にも、影を落とす。ライセンスビジネスの限界が現実になりつつあるとの危機感が高まった。
欧州はライセンス事業強化の過程で、直営店は2店まで減少している。採算は向上したものの、サンリオ自身が消費者と直接接点を持てる場所が少なくなり、ニーズの把握が不十分。ライセンス先に対し、マーケットに合致した商品提案ができておらず、不振を招いているという。
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