コロナ禍で「着物」が苦境、バイセル急伸の裏側 「断捨離」増え、出張買い取りのニーズが急増
例年、色とりどりの振り袖や袴を着た若者たちが多数行き交う成人の日。今年は街の様相が打って変わり、静かに新成人の門出を祝う日となった。
新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化し、多くの自治体は記念式典の開催方式をオンライン配信などに変更。新成人同士がリアルで集う場は減り、呉服店などでは振り袖のレンタルや着付けのキャンセルが続出した。
成人式に限らず、コロナ禍では結婚式やパーティー、お祭りなどの「ハレの場」が激減し、着物業界はかつてない逆風にさらされている。
リサイクル着物の大手も破綻
装いのカジュアル化や若者の着物離れなどにより、着物市場は長らく縮小傾向が続いてきた。着物業界に詳しい「きものと宝飾社」の推計によると、着物小売市場はピークだった1980年度の約1.8兆円から、2019年度は約2780億円と、40年間で8割以上も減少した。
同社の松尾俊亮編集長は「コロナ禍で催事などの開催も制限され、2020年度はさらに厳しい状況。地方の呉服店は割と踏ん張っているが、特に都市部や商業施設内に出店している小売店への影響は甚大だ」と指摘する。
市場全体が縮む中で、比較的健闘しているジャンルもある。代表例が、街中の専門店やネット上で数千円~数万円で売られているリサイクル着物だ。価格面での手の届きやすさなどから一部の着物愛好家らの需要をつかみ、ここ最近は300億円程度の市場規模を維持していた。
ところが、コロナ禍で経営に行き詰まるリサイクル着物の販売業者が出始めた。リサイクル着物の買い取り・再販大手「たんす屋」を全国展開していた東京山喜は、店舗売り上げの急減により2020年4月に経営破綻。業界で先駆けてリサイクル着物を国内外にネット販売してきた「ICHIROYA」も、2020年7月に営業を終了した。
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