リーダーになる人には、どんな人徳が必要か 湯浅誠×加藤紘一 リベラル対談(前編)

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東北に存在する、暗黙の人選システム

湯浅:このお坊さんが適任なのか、適任じゃないのか、皆が見てるっていうことですよね。皆さんは何を見てるんですかね? 人徳っておっしゃったけど。

加藤紘一(かとう・こういち)
前衆議院議員
1939年山形県生まれ。東京大学法学部卒業後、1964年外務省に入省。台北大使館、ワシントン大使館勤務を経て、ハーバード大学で修士号を取得。1972年、総選挙に出馬し初当選。内閣官房長官(宮澤内閣)、自民党幹事長などを歴任。日中友好協会会長も務める。
 

加藤:そう、そこ。東北の人徳っていうのは何なのか。ひとつはね、公的なことへのディボーション(献身)かな。

湯浅:ディボーション、はい。

加藤:英語で言っちゃったけど、そんな、ハイカラなことじゃないんですよ(笑)。人並みにちゃんと地域に貢献してるか、っていうこと。

湯浅:貢献したかしてないか、皆がちゃんと見てる。見て、できている人がミイラになって仏になれる。地域の暗黙の人選システムが働いていたということですね。

加藤:今から10年ぐらい前に、地域の小さな集落にある公民館に入ってみたことがあってね、そこの板でできた壁に、和紙が張ってあるんです。見たら、「掟・出不足一升」って書いてあるわけ。

湯浅:どういう意味ですか。

加藤:たとえば寺の雪囲いだとか、橋が壊れたところの普請だとか、集落を守るための仕事をみんなでやるとき、それに出なかった場合は代わりに酒を1升出せということ。

湯浅:なるほど。

加藤:誰だって出られないときもあるよね。そういうときは労働力の代わりに1升出す。それで作業が終わったあと、その酒をみんなで飲むのよ。

湯浅:地域で平等に協力している感じですね。

加藤:そんなふうに、出不足はしないとか、人の家のものは盗まないとか、隣のうちの母ちゃんに手を出さないとかね(笑)、いろいろおきてがある。

湯浅:(笑)皆がおきてを守って、公に献身している人が誰だかちゃんと見ているということですね。

加藤:そうだね。たとえば、昔の田舎の中学校とか高校はね、部活が終わった放課後、みんなで校庭掃除するんですよ。女子生徒も男子生徒も、音楽部のナンパ専門のやつも、サッカー部のバンカラ組もみんな一緒になってやるわけ。竹ぼうきで校庭を掃いてるふりして、好みの女の子に近づいてラブレターを渡したりね、そういう時間なのよ。

ところが掃除しないで、2階の教室で先生から特別授業してもらってるやつがいる。

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