インフレ期待2%到達でアメリカFRBはどう動く 金利とドルの相互連関的な下落はいったん収束

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話をアメリカの金利上昇に戻す。金利が上昇すれば株価の調整だけでなく、ドル建て債務を積み上げた途上国への影響も懸念されるだろう。リーマンショック後、金融市場ではドルを安価で調達できるようになり、とりわけ新興国では民間部門を中心としてドル建て債務が急速に積み上がったという経緯がある。

こうした、いわば「ドル化した世界」の危うさは過去に本コラムへの寄稿『「ドル化した世界」がFRBの利上げ路線を阻む』でも議論したことがあるので今回は詳しく議論しないが、まだ多くの途上国がドル建て債務を抱えたままの状態が放置されている。かかる状況下、アメリカの金利が上昇する過程では株価の動揺に加え、新興国通貨の価値下落が当該国の債務負担を増すという展開も十分懸念されるものだろう。

2021年はタカ派とハト派のバランスに腐心

一方的に緩和方向への政策運営に尽くせばよかった2020年とは異なり、2021年以降のFRBは国内外への影響に鑑み、タカ派とハト派のバランスを取ることに腐心する難しい局面に入る。必然的に、アメリカの金利の低下とこれに伴うドル安だけを既定路線として見ておけば済んだ2020年とは違った相場観が求められる。

筆者はドル高局面への転換とまでは言わないが、アメリカの金利とドルの相互連関的な下落がいったん収束し、次の潮流に向かう「踊り場」のような年に2021年は位置づけられるのではないかと考えている。
 

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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