最後の寝台特急「サンライズ」乗車率向上の方策 出発時刻を早くする、2人用個室を増やす…

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新幹線は「のぞみ109号」が東京19時51分発、広島23時52分着、航空機は羽田空港20時30分発、広島空港22時00分着なので、到着時刻が遅く広島からの移動が難しいことを考えれば、寝台列車を使うメリットはある。新山口でも、「のぞみ3号」は東京6時15分発、新山口10時34分着、「のぞみ189号」が東京18時12分発、新山口22時39分着なので同じである。

福山―新山口駅間の沿線人口は227万人で、児島地区+坂出+高松市は54万人なので、4倍以上の人口がある。乗車人員の合計で見ても、福山―新山口駅で13万458人、児島+坂出+高松駅の合計が2万3167人なので、5倍以上の差がある。山陽新幹線と並行するが、これだけの差があれば、山陽本線方面でも乗車率は向上できるかもしれない。

なにより、山陽新幹線の駅を目的地とすれば「片道は新幹線」という収益モデルも成立しやすいだろう。

お金をあまりかけない方策

ダイヤとしては上記のように考えるが、ほかにも改善点はあるのではないか。冒頭のとおり、2人用個室はほぼ満席だが、1人用個室には空きがある予約状況が多く、顧客の取りこぼしが見られる。1人用個室シングルには、天井高さ2.1mの平屋室が1編成に6室ある。ここに折り畳み式の上段寝台を追加し、2人利用を可能にすれば、定員も増え、取りこぼしが防げるのではないか。

また、A個室寝台の利用が好調なことから、2人用A個室寝台を設定してはどうか。サンライズは5編成あるので、寝台特急「カシオペア」のE26系客車の内、5両を285系に改造し、付随車のサハネ285形と入れ替えるのである。

E26系客車は現在12両編成で「カシオペア紀行」として運行されているが、編成が長すぎて入線できる路線が少ない。ツアーの募集要項から見るに階下室は販売されていないように見えるので、5両減らして7両編成とすれば、走行コストも低減でき、運用の柔軟性が増す利点があると思える。

電車の付随車は本質的には客車と同じであり、ブレーキシステムを変更すれば、それほどお金をかけずに285系に連結できるのではないか。285系と製造時期が近いE26系は、車両寿命も近く、その意味でも無駄が少ないだろう。固定ファンも多いサンライズの乗車率が向上し、新車が投入されて存続することを願ってやまない。

安藤 昌季 乗り物ライター

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あんどう・まさき / Masaki Andou

1973年、東京都生まれ。編集プロダクション「スタジオサウスサンド」代表で、通勤電車の座席から寝台まで広く関心を持つ「座席鉄」。「鉄道ぴあ」「旅と鉄道」「AERA.dot」「週刊日本刀」などで、乗り物・歴史関係の執筆を広く手掛けるほか、鉄道キャラクター企画、ゲームデザイン、イベント主催なども。著書は「教えてあげる諸葛孔明」(角川ソフィア文庫)、「夢の新幹線 ものしり学習帳」(玄光社)「日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き」(天夢人)

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