最後の寝台特急「サンライズ」乗車率向上の方策 出発時刻を早くする、2人用個室を増やす…

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だが、併結する瀬戸のB個室寝台は乗車率5割ほどであった。ノビノビ座席の利用者は8人なので、乗車率は3割という寂しさである。瀬戸は最も利用が多い金曜日に乗車した際にも(琴平駅直通が行われていた多客期だが)、乗車率8割くらい(出雲はほぼ満席)だったので、土日祝を含めて瀬戸は6割、出雲は8割という報道はあながち外れていないように感じる。

雪の中を疾走するサンライズ(写真:くまちゃん/PIXTA) 

筆者は、瀬戸の平日乗車率が心配となった。欧州では環境負荷やコロナ対策の観点からも、夜行列車見直しの機運が高まっているが、このままだと日本では285系電車の車両寿命とともに、寝台特急が絶滅しかねない。

環境負荷が低く、便利な移動手段が失われるのは、残念な話である。しかし「寝台特急は列車単体では赤字で、往復として新幹線利用も見込めるからトータルでは維持されている」乗り物であり、高いコストのかかる活性化策は難しい。存続させる何かいい方法はないものか。

寝台特急が儲かりにくい理由

1987年4月1日の国鉄の分割民営化の際に取り決められた「運賃・料金収入の区分及び清算に関する協定」によると、JR各社間を直通する寝台特急の収益配分は、得られた収入を運行距離で分割して、決められている。

例えば、東京―高松駅間の瀬戸は、JR各社を以下の割合で走行している。 

JR東日本 東京―熱海 104.6km(13.0%)
JR東 海 熱海―米原 341.3km(42.4%)
JR西日本 米原―児島 314.8km(39.1%)
JR四 国 児島―高松  44.0km(5.5%)

東京―高松間でB個室シングル利用の場合、運賃1万2210円、特急料金3300円、寝台料金7700円で、合計2万2540円である。つまり、乗客1人当たりの収入は以下の通り。

JR東日本 2930円(13.0%)
JR東 海 9557円(42.4%)
JR西日本 8813円(39.1%)
JR四 国 1240円(5.5%)

運賃は遠距離逓減なので、例えば東京―熱海間でJR東日本は運賃分で1587円を受け取っていることになる。同区間は正規運賃だと1980円なので、かなり目減りしている。特急料金は429円、寝台料金は1001円しか受け取れないので、自社管内で完結する特急と比較すると儲からない。

ちなみにJR東日本の特急「踊り子」で、東京―熱海間を移動した場合、運賃1980円、指定席特急料金1890円で、合計3870円である。JR東日本は瀬戸、出雲から踊り子の3870円を下回る2930円しか得られていないことになる。

この収入分割システムで、瀬戸の乗車率が悪いということは「JR四国に直通する利益が少ない」ということだ。米原以西、終着駅までJR西日本区間を走る出雲は、JR四国に支払う5.5%が発生しないうえに、乗車率も高いので瀬戸より儲かる列車のはずだ。

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