日中関係の最悪ケース、全面戦争か局地戦争か

戦争に発展し得るという危機認識が必要

これに対し、欧米を中心に海外の識者や専門家の中には、歴史を振り返り、たとえ小規模な武力衝突や小競り合いであっても、本格的な戦争に至った事例をあげる人が多い。ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリーでもそうした記事を多く目にする。

例えば、今月初めに私が取材したロシアの外交官は、以下のように、小さな事件から大戦争に発展するリスクを指摘していた。

「第一次世界大戦は1914年にサラエボで起きたオーストリアの皇太子夫妻の暗殺事件がきっかけ。第二次世界大戦もドイツ兵がポーランド兵に偽装して起こした自作自演の1939年のグライヴィッツ事件から始まった。どちらも数カ月後に誰もが予期しなかった世界大戦につながった」

さらに、このロシアの外交官は、第一次世界大戦の犠牲者が約3700万人、第二次世界大戦の犠牲者が約6000万人と、犠牲者数が増えてきている事実を指摘し、日中が本格戦争に突入し、史上最大規模の破壊をもたらすような第三次世界大戦を何としてでも予防する必要性を説いていた。

振り返れば、日本も1931年の満州事変がきっかけで、太平洋戦争にまで突入するに至った。予見を欠いた甘い戦略から生じる戦争はあまりにも多く、数多くの長期戦や全面戦争が、短期間で局地的に終わるとの楽観的な見通しから始まっている。直近では、米国によるイラク戦争やアフガン戦争が最たる例だろう。

東シナ海では日本が軍事的優位

戦争・紛争研究や安全保障学の研究で知られる青山学院大学国際政治経済学部の青井千由紀教授は、尖閣・東シナ海ではエスカレーションの可能性はないとする主に日本国内の省庁に根強い見方も、海外で取りざたされるエスカレーションの可能性はあるとの見方も、双方が正しい、と指摘する。

日中のエスカレーションの可能性がないという根拠としては、青井教授は「少なくとも東シナ海では、南シナ海と違って、現状では日本の軍事的優位があり、このことを日中ともによくわかっているため、現状のこう着状態が壊れてエスカレーションに至る可能性は少ない」と指摘した。

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