安倍首相は同盟国に対して配慮するべき アベノミクス新年度の課題(4) マイケル・アマコスト

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Michael Armacost 1937年生まれ。外交官として1982~84年駐フィリピン大使、84~89年政治担当国務次官、89~93年駐日大使を歴任。知日家として知られる(写真:時事)

──日米関係は長期にわたって不安定な状況が続く。トップ同士の個人的信頼関係がないように感じられる。

二人の個人的な相性について真実がどのようなものなのかは知らない。しかし、二人だけで会っているところを誰も見たことがないのは事実。親密な関係にないことは間違いないだろう。

トップの個人的な関係は、良好であるに越したことはない。1980年代のレーガン大統領と中曽根首相は実に相性がよかった。二人はお互いに好意を抱いていたし、尊敬し合ってもいた。ブッシュ大統領と小泉首相の間にも良好な個人的やり取りがあった。

指導者が目に見えて仲がいいと、それが下の実務者にも伝わるものだ。両国の間に何らかの問題が生じた場合にも、問題解決への熱意が伝わり、官僚たちは頑張って仕事をする。

ただ、TPP(環太平洋経済連携協定)のような問題の解決には、それぞれの国益が収斂することがベースになる。日米両国は、高度な通商協定を結ぼうとすることに強い関心を持っている。両首脳が照準を定め、それに向かって決然と、かつ協調性を持って臨めば重要なことを成し遂げられる。

手の内を見せること

──安倍首相に求められる姿勢とは?

難しい交渉は、これからも続く。必要なのは、通商協定から何が得られるかを相手に伝え、かつ、相手側に求める譲歩は何なのかということをはっきり言明することだ。そうすれば交渉相手に安心感を与え、お互いに交渉がしやすくなる。

相手から譲歩を引き出すことは、安倍首相が国内の政治的支持を得るためにどうしても必要だ。それはオバマ大頭領にとっても同じこと。難しい交渉を妥結するためには、お互いのことを気遣う配慮が必要になってくる。

──アジア太平洋地域を重視する「リバランス」は、前進しているか。

オバマ大統領がリバランスを宣言したのは中東や南アジアの紛争地から米軍を撤退させるためだった。それは東アジアの友好国との信頼関係を確認するためのメッセージでもある。しかし、その宣言から3年経ち、リバランスの本気度、持続可能性について懐疑的な声が高まっている。

私が直接話を聞いた東アジア諸国の指導者の懸念は、四つにまとめられる。(1)米国で深刻な財政問題が継続している、(2)中東および南アジアに対する米政府上層部の関心が変わっていないように見える、(3)米国の信頼性について同盟国が疑問を抱いている、(4)TPPはリバランスの重要な要素だが11月の中間選挙を控えて政府の主導権が弱まっている、ということだ。

「アジア回帰」は日本をはじめとする東アジアの指導者にとって歓迎すべき内容だが、それを最優先課題として進める意志と能力を米国が持っているのかどうか、という点で疑問が生じている。米国はグローバルプレゼンスを維持するために、この疑いを晴らさなければならない。

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