安倍首相は同盟国に対して配慮するべき アベノミクス新年度の課題(4) マイケル・アマコスト

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──深刻な財政問題については、一時期、債務上限をめぐって議会で与野党が対立したまま政府機関が機能不全に陥ったこともあった。

多くの政府機関は、依然としてうまく機能していない。アジア諸国の指導者からの信頼を取り戻すためにも、オバマ大統領はそういう機能不全を正したうえで、リバランスに対する懸念をぬぐわなければならない。リバランスについて米政府が真剣に取り組んでいることを示し、アジアの友好国を安心させることがオバマ大統領の務めであり、それは米国の国益につながる。

イラクやアフガニスタンからの撤退に伴う軍備縮小を避ける目的でリバランスを進めているとの見方もあり、日本政府はこれを歓迎していない。イラクやアフガニスタンからの撤退によって、沖縄の海兵隊が増強されるのではないかと危惧している。

そうなれば、日本における米軍基地問題をさらに悪化させる可能性がある。こうした懸念を抱かせるべきではない。オバマ大統領は、同盟国を安心させるメッセージを発するべきだ。リバランスはアジアにおける米国の軍事力を強化することではない、と示す必要がある。

中国との関係が課題

──集団的自衛権に関する日本での議論についてどう思うか。

過去においても、日本は集団的自衛権があることをつねに認めてきている。しかし、その「権利を行使する権利」が日本政府にあるとは認めてこなかった。権利はあっても行使をする意志がない、というのが戦後の日本政府の一貫した方針。つまり、防衛問題に対し慎重姿勢を貫いていた。

これは、本質的には日本政府が自らに課した抑制だ。ところが、ここ20年ほど、その自制を問い直す議論がなされるようになった。

私が日本に赴任していたときには、PKO(国連平和維持活動)法案について議論されていた。これが戦後の日本の安全保障政策について、初めて行った修正だったと思う。その後、小泉首相は国連の要請に応じた非戦闘部隊の派遣、兵站支援を行い、あるいは必要に応じて同盟国として努力するなど、従来の安全保障政策を変化させた。

それは日米同盟にとって均衡のとれた、グローバルかつ作戦上、理にかなったアプローチとして米国政府に歓迎された。集団的自衛権の行使はそういう方向へのもう一つのステップではないかと思う。安倍首相はその方向に踏み出している。

──日中の間には、さまざまな摩擦の種がある。尖閣諸島をめぐる対立は、その代表的なものだ。

尖閣問題は、極めて難しい。米国政府の核心的利益ははっきりしているのだが、この問題を力ずくで解決することはできない。解決に向けた作戦を立てることもできない。

中国が高圧的な構えで行動している背景には、最近の米国の中国寄りの態度がある。それでややつけ上がった面があった。ただ、ヒラリー・クリントン前国務長官が日本の領土であるとクリアに発言したことは、大きな意味を持っている。日本政府の支配下にあると米国がはっきり認めることによって、日本を挑発してきた中国政府を落胆させた。

現時点で望ましい米国の態度は、同盟国の日本を安心させること、そして中国に対する抑止力を高めることだ。

週刊東洋経済2014年5月3日-10日合併号<4月28日発売>核心リポート「アベノミクス新年度の課題」より(取材時点は4月11日)

 

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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