「緊急事態宣言」再発出が効果的でない根本原因 欧米の法制度にあって日本にはないもの
こうした問題点については、半年以上前から指摘されていたことであり、本格的に感染が拡大した場合に備えて法の不備を整えるべきであるという点も議論に上がっていた。にもかかわらず、感染がいったん小康状態に入ったこともあり、議論は棚上げとなったままとなっていた。
ここへきて菅首相が罰則なども視野に入れた法改正について言及したが、本来であればもっと早くに着手すべきであったことは間違いない。感染が急速に拡大していることを受けて、今さらながらあわてて、緊急事態宣言発出についての議論を再開しだしたのは、状況を楽観視したために後手に回っているとのそしりを免れないだろう。
日本の安全を脅かす危機は新型コロナウイルスだけではない。地震や津波、豪雨といったような自然災害もあれば、北朝鮮のミサイルによる脅威、尖閣諸島などへの海洋進出を推し進める中国による脅威もある。
こうした事態に際して、必要となるのが緊急事態法制である。緊急事態は突然発生するものであり、事前に法制度を準備しておかなければならない。日本が法治国家である以上、法律の根拠なく国家権力を発動することは許されないのである。
一般的な「緊急事態」が統括的に規定されていない
ところが日本の法制度には、一般的な「緊急事態」を統括的に規定する法律がない。戦争や国際テロなどの有事には事態対処法、地震や豪雨などの自然災害に対しては災害対策基本法、そして新型コロナウイルスのような感染症には感染症法や新型インフルエンザ対策特別措置法といったように、別個の事態に対してそれぞれの法律が定められている。
そして、その多くが特別措置法(特措法)で構成されていることも特徴としてあげられる。原発事故であっても、イラク戦争への対応であっても、新型インフルエンザであっても、どれも特措法で対応しているのだ。
これに対して、欧米では緊急事態というものを統合的に捉えている。例えばアメリカの「1988年スタフォード法」(災害救助・緊急支援法)では、緊急事態を次のように定義している。
1988年スタフォード法は、自然災害だけでなくテロなどの「すべての危機について連邦政府のサポートを必要とするもの」を「緊急事態」としている。同法に基づいて設立されている連邦緊急事態管理庁(FEMA)も、あらゆる緊急事態に対処する「オールハザード・アプローチ」という体制をとっている。
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