帝人は創業100周年までに成長の絵を描く 鈴木純社長の戦略とは?

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すずき・じゅん 1958年生まれ。83年東京大学大学院理学系研究科修士課程修了、帝人入社。創薬評価研究部長、駐欧州総代表などを経て、2014年4月より現職。

早くから持ち株会社制や社外取締役を導入するなど、帝人はガバナンス改革を積極的に行ってきた。一方、業績面ではライバルの東レに大きく水をあけられている。この4月、最年少役員からトップに就いた鈴木純社長は、名門繊維会社をどのように成長軌道に乗せるのか。

 ──社長という立場になって、あらためて気づいたことは。

樹脂・フィルム事業は業績が悪く、構造改革が必要だと言い続けてきた。だが、あいさつ回りで200社近くの取引先を訪問し、「意外と期待されている部分もあるのだな」と感じた。赤字を止めることが構造改革だと考えると間違える。(不振事業でも)いいものをちゃんと見つけることが重要で、構造改革と成長戦略は裏と表の関係にある。

「お客さんのニーズに応えて」とよく言われるが、それはウソ。顧客の声だけでは本当のニーズは見えてこない。自分たちでマーケットを探さないと。私が携わってきた医薬ビジネスでは、顧客が目の前の改善から夢の薬のことまで、すべての要望を同じレベルで話す。そうした声をどう選別するかが大事だ。

──2016年に500億円台という営業利益目標(14年度見通し250億円)は高すぎませんか。

500億円は最低ラインだ。そのために構造改革をやり続けないといけない。創業100周年を迎える18年までに成長の絵を描きたい。
 ただ、反省もある。樹脂・フィルム事業がなぜ一気に赤字になったのか。シャープやソニーなど、日系メーカーに供給先を過度に依存していたことは事実だ。ビジネスをやるのなら、中国や韓国を見据えて、3本足、4本足でやる必要がある。

──同じ繊維会社の中でも、東レとは道行きが大きく分かれました。

すぐに追いつけるなんて、とても思っていない。東レが偉いのは、川中分野のビジネスをコツコツやってきたこと。たとえば、ユニクロのSPAという革命的モデルを主力事業に取り込んだが、私たちは単に糸売りをしていた。炭素繊維もそう。東レでは30年赤字というが、本当だったと思う。そういった点は素直に反省したい。

1990年代の終わりから2000年代初頭にかけて、帝人の中でも、素材系は川上分野に特化した。12年の中長期経営ビジョンでは、この川上偏重をやめて下流に行けというメッセージを出した。単なる素材提供屋でなく、部品や製品を提供できるところまで広げようとした。だが、意識が変わるのに時間がかかっている。まだ悪戦苦闘しているが、素材・ヘルスケア・ITの3分野と、その三つが重なる領域を強化していきたい。

(撮影:今井康一)

週刊東洋経済2014年6月14日号〈6月9日発売〉掲載の「この人に聞く」を転載)

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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