「座り時間が長い人」死亡リスク減らす運動時間 1日1時間と言われたが、もっと短くていい

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過去のいくつかの研究では、その答えは「ノー」だった。例えば、2016年のある研究では、複数の調査から集められた100万人以上のデータを集計し、その結果、座っていることによる悪影響をなくすためには、女性も男性も1日60分から75分程度、適度な運動をする必要があるとした。

しかし、この研究は過去の類似の研究と同様に、被験者にどのくらい運動したか、あるいは座っていたかを尋ね、思い出してもらうものだった。実は、その点が問題となる可能性がある。自分の生活についての私たちの説明は、あまり信頼できるものではなく、運動の時間については長く見積もりすぎ、座っていた時間は短く見積もりすぎてしまうからだ。

大勢がこのように誤った記憶を伝えると、その結果、逆説的な結果が生じる。すなわち、運動が実際よりも効果がないように見えてしまうのだ。なぜなら、「活動的な」人々でも、実際に運動した時間は申告した時間よりも少なく、その少ない時間で効果が出せたのに、申告した多くの時間に基づいて計算することによって、効果を出すにはたくさんの運動が必要であるように見えてしまうからだ。

今回実施された新たな研究は、『ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディスン』の特別号に掲載されたもので、この号はWHO(世界保健機関)による身体的活動ガイドラインの改訂と、それに関連する研究を特集している。

2016年の論文の執筆者の多くが、今回も同じ調査方法と分析方法を用いたが、変更した点もあった。それは、運動した時間と座っていた時間を客観的に測定するため、活動量計を装着した人々のデータを用いたということだ。

活動量計で客観的に時間を測った

今回の新たな研究では、この活動量計を装着した男女、合計約5万人のデータが含まれた、9つの調査結果が集計された。研究に参加した被験者は、ヨーロッパかアメリカに住む中年以上の年齢の人たちだった。

その結果わかったのは、多くの被験者がかなり長い時間座っていることで、その時間は平均で10時間近かった。また、ほとんど動かない人も多く、運動は主に歩くことで、運動時間は1日わずか2〜3分という場合もあった。

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