台湾経済「2021年は3.68%成長予想」の根拠 コロナ禍の早期対応が原点、IT需要増に沸く

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――年明けにはアメリカにバイデン新政権が発足します。これまでの米中対立の基調は変わるでしょうか。

米中対立は2021年も続き、環境がすぐに変わるということはありません。バイデン新大統領も対中政策をすぐに変える意思はなく、制裁関税といった経済政策についても当面は取り下げる可能性は薄いと思います。

米中対立はにわかに出た対立ではなくて構造的なものです。しかも、アメリカの政界では超党派的なものになっています。そのような動きをみながら、台湾企業は生産など拠点の分散を続けると思います。

コロナ禍でますます電子商取引がさらに広がりをみせています。その商機を掌中に収めるために、メーカー側も消費者に近いところに生産拠点を移さざるをえません。台湾のIT企業も、アメリカ企業などからのリクエストを受けて、グローバルに拠点分散を進めていくでしょう。

中台関係は現状維持が続く

――中国が強圧的な対外姿勢を取る中で、台湾との関係も複雑なものになっています。経済面から、中台関係をどうみていますか。

伊藤信悟(いとう・しんご)/1970年生まれ。東京大学卒。富士総合研究所国際調査部、台湾経済研究院客員研究員、みずほ総合研究所アジア調査部中国室長などを経て、2018年から現職。専門は中国・台湾経済、中台関係。主要著書に『WTO加盟で中国経済が変わる』(共著)など。(撮影・梅谷秀司)

中国は「一国二制度」を念頭に置いた台湾との統一を念頭に置いている一方で、台湾の蔡英文政権は、それは絶対に受け入れられないという姿勢です。台湾の世論も、中国が言うような統一を受け入れるのはごく少数で、現状維持を望む声が圧倒的に強い状態です。

先程グローバルな拠点分散を台湾企業が図りつつあるとお話ししましたが、投資環境という観点からすれば、中国はインフラの整備状況やサプライチェーンの厚さ、市場の大きさという魅力を備えていることは確かです。その中国から他国に拠点を分散させ、円滑なオペレーションをするのは決して楽なことではありません。台湾企業の国際経営能力が改めて試されているといえるでしょう。

――中国は新型コロナウイルス感染症の発生国ですが、比較的早めに感染拡大に対処し、2020年はプラス成長が予測されています。IMF(国際通貨基金)は2020年1.9%、21年8.2%と見ています。

中国はロックダウンやITを利用、あるいはコミュニティ単位の管理体制を活用し、比較的早めに感染拡大をコントロールすることに成功しました。生産体制を早めに回復させ、とくにPCやネットワーク関連機器、あるいはマスクや消毒液などの医療関連製品といったコロナ関連品の需要の世界的高まりに応えました。これらはもともと中国のシェアが高かった品目です。そのため、輸出中心に経済は回復していいます。

また低金利が続く中、不動産市場が活況を迎えています。さらに5G関連、2020年に発生した大規模水害を受けた水利関連、ライトレールなどの都市交通関連のインフラ投資も活発に行われています。輸出や投資と比べるとゆっくりではありますが、消費も戻りつつあります。政府の景気対策が急速にしぼむ可能性は低く、2021年もプラス成長が続く見込みです。

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