ロボットスーツで「寝たきりゼロ」を目指す 山海嘉之・サイバーダイン社長に聞く

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――筑波大学大学院教授も兼務している。二足のわらじでは、経営がおそろかになるのではないか。

さんかい・よしゆき●1958年生まれ。2004年筑波大学大学院システム情報工学研究科教授(現任)、当社設立。2006年社長就任(撮影:風間仁一郎)

一般的に学者というと、浮世離れしているイメージがあるが、これを変えていきたいと思っている。テクノロジーで新産業を創出するには、社会が直面する課題を解決する方法を考え、創り出し、実装していく。この方法を考えるのが学者としての自分。

そして社会を変革するテクノロジーを経営に組み込むのが経営者としての自分だ。この両方ができなければ、イノベーションは起こせない。

種類株式を用いた上場の意味するところも大きい。社会にとって、HALやサイバーダインが大切だと判断してくれた投資家の方々が舵取りをゆだねてくれている。

――株式市場には、種類株の発行による上場に疑問を呈する向きもある。

種類株を発行した目的は、会社が掲げたビジョンに向かって、軸をぶらさずに加速するためだ。大きな一手をスピーディーに、かつパラレルに、どんどん打っていける。基礎研究のレベルからビジネスに持っていくところまで、いろいろなことが私の頭の中で同時展開されている。

本質はディティールに宿る

――ベンチャーとはいえ、山海社長一人に権限を集中するリスクもあるのでは?

サイバーダインでは、次のチャレンジャーを生み出す人材育成も行っていて、私の仕事を任せられる人、つまり「リトル山海」もどんどん出てきている。が、今はイノベーションを起こしていく段階であり、やはり私がさまざまな役割を担っていかなければならない。

各部門長に「あれはどうなっているか」と聞いたときに「部下がこう言っていたのですが」と言われることがある。彼らは部下に頼み、その部下はさらに後輩に頼んでいた。そんな状況になると、昨日、今日入った「後輩」の発想が会社を動かすことになる。社会はほとんどそうなのだろう。

なぜ推進する人が自らやらないのか。ベテラン中のベテランが、本気であの手この手で突破することを繰り返していかないと、本来不可能だったことができるようにはならない。「トップダウン」ではない、「トップマネジメント」に尽きる。

たとえば、スティーブ・ジョブズがiPhoneの使い方で悩むわけがない。テクノロジーを中心とする企業であるのに、その新製品に対してディテールまで見えない経営者はおかしい。学べるようなトップがいないと、周りはついていかない。「わかっていないよ、あの人は」となってしまう。そうならないように、自分自身で個と全体を扱えないとだめ。木を見て森「も」見るだけではなく、木の皮さえも見る。物事の本質はディテールに宿る。ディテールが崩れると全体もおかしくなる。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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