ロボットスーツで「寝たきりゼロ」を目指す

山海嘉之・サイバーダイン社長に聞く

――欧州で昨年、医療機器の認証を取得し、ビジネスチャンスが大きく広がった。

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ロボットスーツ「HAL」(写真:Prof. Sankai University of Tsukuba / CYBERDYNE Inc.)

われわれは機器をレンタルで展開している。利用方法が適切であるかを見ておく必要があるからだ。

認証を得られた欧州で展開している医療用のHALは、1時間~1時間30分の1回の治療あたり500ユーロ(約7万円)かかる。60回で1パッケージになっており、合計では3万ユーロ(約420万円)だ。ドイツでは公的労災保険でカバーされる。この治療費のうち、ドイツ子会社の治療センターで行われるものに関しては100%、一般病院の場合は40%が当社の収入だ。

ドイツ子会社では昨年11月から試験運用を始めた。その後拡張を進め、現在では1日あたり30名強が利用できるようになっている。その間に、ドイツの公的保険機構がベルリンやフランクフルトなど、各地方に持っている9つの病院でのレンタル導入も決まった。それらの病院から同じ地方の周辺病院にも広まり、今年度の下半期にも加速する段階に入る。

売上高は倍増

――ロボットスーツの今後の展開は?

今年度は、(医療用や福祉用の「HAL」に加えて)新製品が出る。既存製品は両下肢あるいは片方の脚に着けるタイプだが、「HAL単関節用」も年内に出荷を始める。膝や肘といった必要なところだけにつけるもので、手術直後にベッド上でリハビリができ、自宅でも同じくベッドや椅子の上で使える。より身近で簡便に使えるデバイスになる。また、介護者の腰痛防止を兼ねた腰補助用の「HAL作業支援用」も今年から一部出荷する。本格的な展開は来年以降だ。

さらに日常生活の中で使えるヘルスケアのデバイスも着々と準備を進めている。今年中には、脳梗塞の3大リスク要因である動脈硬化、不整脈、脱水症状の兆候を捕らえられるデバイスの出荷を一部はじめ、こちらも来年以降本格展開させる。さらに、家庭の中で寝たきりの人が自立度を高めていくためのデバイスや、トイレや食事といった難しい分野の支援技術も準備していく。こうしたものを今後5年で徐々に出していきながら、それらを統合したシステムを社会に配備していきたい。

――黒字化のメドはいつなのか。

今年度は売上高が9億円と、前期比でほぼ倍増になる。今後5年というのは言い過ぎだが、数年間は毎年倍増くらいのレベルを考えている。通常であれば黒字化してからの上場がよかったのかもしれない。確かに人員を増やさず、研究開発投資をしなければ、ほうっておいても黒字化はする。だが、そこであえて新たな投資をして新製品ラインナップを増やす。

ドイツではすでに、HALを使った治療に対して公的労災保険が適用されている。米国では食品医薬品局(FDA)への医療機器認証の申請を1カ月以内に行う。日本でも治験が進んでいる。われわれのビジネスは、社会の仕組みの中に組み込まれて初めて動き出す。2015年度の下半期からは、売り上げ拡大のペースがさらに早くなり、2016年度にはブレークイーブン(経常損益ゼロ)になるとみている。

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