鉄道は再び交通の主役に返り咲くか 【特集・鉄道新世紀】



 だが、「鉄道の輸出が悪いわけではないが、その間に日本の鉄道が死んでしまう」と、鉄道に詳しい日本銀行金融研究所の宇都宮浄人企画役は警告する。

「海外プラントは、リスクが大きく、そのリスクに対する政府保証は公的資金によって賄われる。しかし海外のハイリスクな投資で失われる公的資金のいくばくかは、本来、国内の鉄軌道の立て直しに充てるべき」。

民主党政権は決して国内の鉄道を軽視しているわけではない。政策の中には自動車中心の政策を転換し鉄道やバスを充実させる「総合交通ビジョンの実現」がある。また、国民の移動する権利を保障する「交通基本法」の制定も進めている。しかし、高速道路無料化という“政策の矛盾”が、地方鉄道を揺さぶっている。

費用が半分になれば鉄道を維持できる

政府を当てにできない中で、民間から鉄道復権に向けた動きが現れ始めている。

たとえば、鉄路と道路の双方を走れるDMVを開発したJR北海道の柿沼博彦副社長は、「あくまで、私案だが」と前置きしつつ、「スマートカーという次世代鉄道を構想中」と明かす。

車両を新造するのではなく、鉄道の台車にトラックのフレームとバスのボディを載せる。これにより製造費用と維持費用が半分になる。車体の重量も半分になるため、線路の傷みが軽減される。

さらに運行システムにGPSを導入すれば、地上のインフラコストも劇的に減るという。「スマートカーなら鉄道のコストが2分の1になる。導入できれば、経営難にあえぐ地方の鉄道会社も鉄道事業を続けることができるはず」と柿沼氏は期待する。

高齢化が進む中で、公共交通としての鉄道の重要性は高まっていく。未来へつながる鉄道のあるべき姿を、今こそ真剣に考えるべきだろう。

『週刊東洋経済』2010年4月3日特大号(2010年3月29日発売)


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