クルマ電動化が急加速、素材メーカーに「商機」 生産能力や開発力を強化、課題は値段の高さ

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例えば、リチウムイオン2次電池(LIB)の主力材料の1つで、電気ショートを防ぐセパレーター(絶縁材)は、素材メーカーが成長事業として強化に努めてきた領域だ。

セパレーターのシェアが世界トップクラスの旭化成は、現在11億平方メートルあるLIB向けの年間生産能力を、2021年度中に同15.5億平方メートルに引き上げる計画だ。2025年ごろには同30億平方メートルまで増強する予定という。

軽量化素材の開発に注力

EV用途のLIB向けセパレーターに限ればシェア世界上位の住友化学は、2017年度の年産が1.8億平方メートルだったが、段階的な増強により2021年度には4億平方メートルまで拡大させる。正極材を含む電池材料事業全体は、2019年度の売上高(推定500億円)を2024年度には倍増させる方針だ。

また、電動車の大きな課題は電池燃料の航続距離だが、これを伸ばすには電池の高容量化に加えて、車体を軽くする必要もある。そこで化学や合繊各社は、自動車を軽量化させる素材の開発や生産力の強化に注力してきた。

代表的な素材の一つが、プラスチック素材のポリプロピレン(PP)樹脂に合成ゴムやガラス繊維、無機フィラーなどを混ぜて強度を補強した「PPコンパウンド」だ。金属と比べると重量は半分程度で、自動車のバンパーや内装材への採用が増えている。また、繊維状のガラスにPP樹脂を混ぜて製造するガラス繊維強化PPも、軽くて丈夫な素材として後部ドアなどへの採用が進んでいる。

航空機にも使われる強度と軽さを持つ炭素繊維強化樹脂も、自動車向けの大幅な需要増が期待されている。重量は鉄のおよそ4分の1の軽さながら、強度は鉄の10倍になる。ただ、コストが高く、製造までの時間もかかることからまだ一部の高級車への採用に限られる。だが、その課題さえクリアすれば、車の電動化の波に乗って大きく成長するかもしれない。

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