菅首相、政権危機で急浮上する「4月政変説」 コロナ対応迷走で支持率急落、解散断行で勝負

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となれば、菅首相が目論む順調な総裁再選には「最低でも261議席以上が必要」(自民幹部)となる。ただ、これまでの自民党や各種調査機関の選挙情勢調査でも、「自民30議席減」との予測が多く、「現状でも(261議席獲得の)可能性は五分五分」(選挙アナリスト)とみられている。

そこで、次の選択肢となるのは会期末解散だ。通常会期中にデジタル庁創設や携帯電話料金値下げを実現しての解散断行なら「勝機はある」(菅首相周辺)のは確かだ。ただ、日程的には公明党が最重要視する東京都議選とのダブル選挙となる可能性が大きく、山口那津男公明党代表は「都議選とのダブルは反対」と繰り返している。

公明党とのパイプの太さで政局の主導権を維持してきた菅首相や二階俊博自民党幹事長にとって、「公明党の反対を押し切って解散を断行すれば、全国での公明票が減りかねない」(自民選対)とのリスクがある。

不確定要素だらけの2021年政局

では、3番目の選択肢となる五輪後の9月解散・10月選挙となった場合はどうか。この場合、菅首相のメリットは極めて微妙だ。東京五輪・パラリンピックの閉幕は9月5日で、9月中旬に予定される自民総裁選と解散時期は重なる。

仮に9月中の衆院選投開票を想定すれば、総裁選を1カ月程度延長しなければならない。逆に総裁選を予定どおり実施すれば、日程的には9月下旬以降の解散となるが、公選法上は解散抜きの任期満了選挙となる可能性が大きい。

その場合、選挙で自民が大幅議席減となれば菅首相が総裁再選を果たしていた場合でも、退陣もしくは「政権の死に体化」は避けられない。また、選挙後の総裁選となれば「選挙に勝てば無投票再選だが、負ければ菅首相の出馬自体が危うくなる」(自民幹部)とみられている。

「来年のことを言うと鬼が笑う」というセリフは政界でも多用されるが、2021年の政局は「過去に例がないくらい不確定要素が多い」(自民長老)のは事実。『政治家の覚悟』という著書があり、「意志あれば道あり」を座右の銘とする菅首相が、いつ勝負に出て伝家の宝刀を抜くのか。「それはコロナの感染防止と同様に『神のみぞ知る』」(同)ということになりそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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