日本人がデンマーク式「大人の学校」で学ぶ理由 北海道東川町で挑戦する日本型「人生の学校」
日本から来る留学生は「何もしない時間」がスケジュールに入っていることに最初は不安に感じる人が多く、「この時間はあなたの好きなように使っていいですよ」と伝えられると、「ほかの人はどんなことをしていますか?」と戸惑うこともあるそうです。
留学先として「フォルケホイスコーレ」を見たとき「人生を学び直す」というコンセプトは、「VUCA(Volatility=激動、Uncertainty=不確実性、Complexity=複雑性、Ambiguity=不透明性)」とも呼ばれる不確実性の高い現代に合っていると言えそうです。
また授業料は国が運営費を補助しているのもあって比較的リーズナブルで、大学・大学院と違い、留学生でもデンマーク人と費用が同じというのも魅力的です。一方で参加期間が平均5カ月間くらいのところが多いようで、日本の社会人の場合はそこがネックになるかもしれません。
北海道東川町の「フォルケホイスコーレ」
コロナ禍で現在は留学がままならないですが、「フォルケホイスコーレ」をモデルにした「人生の学校」のプログラムが北海道東川町で実施されています。東川町は旭川空港から車で15分ほどの場所にある人口約8000人の町で、移住者が近年増加していることで知られています。
『東川スタイル 人口8000人のまちが共創する未来の価値基準』(産学社)の編著者で、慶應義塾大学総合政策学部の玉村雅敏教授は、東川町の特徴として以下の点を挙げます。
- ・北海道内のみならず、国内外からの定住者が増え、人口が25年で約16%増加している。
- ・このまちでは、「Life(くらし)」のなかに「Work(しごと)」を持つという、自然なライフスタイルを大切にしている人が多い。
- ・人口約8000人のまちに、60以上の個性的なカフェ、飲食店、ベーカリー、ショップ、工房などがあり、それぞれの「小さな経済」が成り立っている。
- ・お店もゆるやかに影響し合って、無理なくナリワイを営んでいる。
- ・人びとのライフスタイルと小さな経済が連鎖し、まちを活性化させる豊かな生態系が形成されている。
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Compathという企業が運営するプログラムは、休みが取りづらい日本人に合わせて6泊7日という短期間で9月に実施。20代を中心に10代〜40代の15人が参加しました。参加者の動機は「人生について考える時間が持てること」「フォルケホイスコーレに興味があった」など。中には海外留学の機会がなくなったから、参加したという人もいたそうです。
玉村教授は同社のプログラムに対するアドバイスをしており、「東川町のプログラムに参加された方は、一過性の関係ではなくなるでしょう。地域に住んでいる方と参加した人が影響しながら、繰り返し学び続ける関係性ができ上がってくるのではないでしょうか」と語ります。
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