分析結果から、「レストラン、ショッピングセンター等」を例にとると、決定係数は0.735と高く、「利用率」は今回用いた説明変数でおおむね説明可能である。
各説明変数の回帰係数によると、前日の「感染者数」が1人増えると、「第1波」では「利用率」がベースラインからマイナス0.025%(100人でマイナス2.5%)、「第2波」ではマイナス0.003%(100人でマイナス0.3%)と、第2波のほうが影響は小さくなりながらも「感染者数」の増加により人々が行動を自粛させていたことがわかる。
しかし、「第3波」では、回帰係数は僅少かつ5%水準で統計的に有意ではないとの結果が得られた。「第3波」においては、人々は「感染者数」の増加によって行動を変化させていないことが計量的に明らかとなった。
「緊急事態宣言」「GoTo」では行動が変化
なお、緊急事態宣言が発出されている期間はベースラインからマイナス17.5%との結果が示され、緊急事態宣言には人々の行動を抑制させる効果があったようだ。また、GoToトラベルの実施期間はプラス2.1%になり、GoToには経済活動を活性化させるという一定の政策効果が出ていたといえる。
ほかにも、決定係数が高い「地下鉄、バス、駅等」、「職場、オフィス等」、「居住地」に対する推計モデルについても、「第1波」から「第3波」にかけて影響(回帰係数の絶対値)が小さくなり、「第3波」ではいずれも統計的に有意ではないとの結果が得られた。人々は日々の「感染者数」のヘッドラインにより行動を変化させることが極めて少なくなったといえる。
「感染拡大⇒自主的な自粛⇒感染者数の減少」という感染拡大を抑制して自然に安定化させる効果(ビルトイン・スタビライザー効果)は第1波ではあったが、第3波ではなくなった状態となっている。もはや政府や当局が「自粛」を呼びかけるだけでは変化は起きない。強制力を伴った措置が必要という議論もあるだろう。それが望ましいかという問題は別にあるが、少なくともこれまでのやり方が通用しなくなっていることは確かである。
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