コロナ「第3波」、行動への影響は統計的に「ゼロ」 流行から10カ月、人々の受け止め方には変化も

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分析結果から、「レストラン、ショッピングセンター等」を例にとると、決定係数は0.735と高く、「利用率」は今回用いた説明変数でおおむね説明可能である。

各説明変数の回帰係数によると、前日の「感染者数」が1人増えると、「第1波」では「利用率」がベースラインからマイナス0.025%(100人でマイナス2.5%)、「第2波」ではマイナス0.003%(100人でマイナス0.3%)と、第2波のほうが影響は小さくなりながらも「感染者数」の増加により人々が行動を自粛させていたことがわかる。

しかし、「第3波」では、回帰係数は僅少かつ5%水準で統計的に有意ではないとの結果が得られた。「第3波」においては、人々は「感染者数」の増加によって行動を変化させていないことが計量的に明らかとなった。

「緊急事態宣言」「GoTo」では行動が変化

なお、緊急事態宣言が発出されている期間はベースラインからマイナス17.5%との結果が示され、緊急事態宣言には人々の行動を抑制させる効果があったようだ。また、GoToトラベルの実施期間はプラス2.1%になり、GoToには経済活動を活性化させるという一定の政策効果が出ていたといえる。

ほかにも、決定係数が高い「地下鉄、バス、駅等」、「職場、オフィス等」、「居住地」に対する推計モデルについても、「第1波」から「第3波」にかけて影響(回帰係数の絶対値)が小さくなり、「第3波」ではいずれも統計的に有意ではないとの結果が得られた。人々は日々の「感染者数」のヘッドラインにより行動を変化させることが極めて少なくなったといえる。

「感染拡大⇒自主的な自粛⇒感染者数の減少」という感染拡大を抑制して自然に安定化させる効果(ビルトイン・スタビライザー効果)は第1波ではあったが、第3波ではなくなった状態となっている。もはや政府や当局が「自粛」を呼びかけるだけでは変化は起きない。強制力を伴った措置が必要という議論もあるだろう。それが望ましいかという問題は別にあるが、少なくともこれまでのやり方が通用しなくなっていることは確かである。

末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト

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すえひろ とおる / Toru Suehiro

2009年にみずほ証券に入社し、債券ストラテジストや債券ディーラー、エコノミスト業務に従事。2020年12月に大和証券に移籍、エクイティ調査部所属。マクロ経済指標の計量分析や市場分析、将来予測に関する定量分析に強み。債券と株式の両方で分析経験。民間エコノミスト約40名が参画する経済予測「ESPフォーキャスト調査」で2019年度、2021年度の優秀フォーキャスターに選出。

2007年立教大学理学部卒業。2009年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学修士)。2014年一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース修了(MBA)。2023年法政大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了(経済学博士)。

 

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