陸上長距離「トップ選手になぜか双子が多い」訳 遺伝?お互い支え合える?あふれる諸説

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「双子だったから、社会人まで陸上を続けられた」と話すのは、トラックの長距離種目とマラソンでともに日本代表を経験している大南姉妹の姉・博美さんだ。大南姉妹は一卵性の双子だが、性格や走りのタイプは異なるという。博美さんはトラック種目を得意とし、敬美さんはマラソンで強さを発揮した。博美さんは言う。

「いちばん近いライバルでもあるし、誰にも言えないことを相談できる相手でもある。私は足が痛いときなど、監督やコーチに相談しづらくて、我慢しちゃうタイプ。体調が悪くても、練習を休みたくなくて無理してやってしまうとき、敬美が『休んだほうがいい』と止めてくれることもあった。おかげで無理をしなくて済んだり、故障が長引かなくて済んだり……そういうことはたくさんありました」

敬美さんも「一緒に走れているときは、助け合ったり、声を掛け合える。どちらかが怪我や故障で走れないときも、もう一人が頑張っているのを見ると、自分も頑張ろうと思えた」。

姉妹は現在、ダイシンプラント陸上部の監督とコーチを務める。監督を務める博美さんが「敬美がいることで、練習内容や選手のことでも相談がしやすい」と言えば、敬美さんも「いろいろ相談しながら、こういうときはどうしたらいいか、とか2人で考えながらできるのはすごくいい」と話す。指導者になってもその絆は強い。

所属チームではランニングクラブ「Luxe(リュクス)」を運営するが、そこには小学生の双子の女の子も在籍しているそうだ。「2人で競って練習を頑張っている。今はいろいろな種目をやっているので、体力がついてきたら長距離も走らせてあげたい」(博美さん)。

遺伝と環境は複雑に絡み合う

前出の安藤教授は、長年の研究で得た知見について、次のように語る。

「双子で条件を統一してデータを取ると、一般では見えないものがクリアに見えるかと思っていたが、やはり人間がやることというのは複雑で、体系的に説明できるものではない。

人間側が定義したどんな能力であれ、多かれ少なかれ、遺伝的な能力は表れてくるし、長距離に限らず、能力の個人差に遺伝子の影響力というのは、中程度に効いてきていると思う。遺伝と環境はどちらも大事なもので、切り離して考えることはできない。交互に複雑に絡み合いながら、人間の行動や心に影響を与えている」

最高潮を迎えている駅伝シーズン。双子に注目することで、遺伝子の神秘、人間の能力を形成する要因の奥深さを考えながら、観戦してみるのも面白いだろう。

松田 珠子 ライター

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まつだ たまこ / Tamako Matsuda

静岡県出身。大学卒業後、スポーツ関連財団勤務、スポーツコミュニケーションズ勤務を経てフリーランスに。スポーツ、山、子育て(教育)などの分野で取材・執筆。著書に『山岳王 望月将悟』(山と渓谷社)。現在は石川県金沢市在住。小学生双子男児の母。

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