トランプ退陣でいよいよ「北朝鮮」がヤバくなる 中国頼みにも限界?金正恩氏はどうするのか

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だが、社会不安がすでに表面化しているのは明らかだ。映画をはじめとする外国のメディア、特に韓国の映画やテレビを見るという、いわゆる「反社会主義」的活動の取り締まりを政府がここ数カ月強化していることからもそれはうかがえる。

政権にプレッシャーがかかっていることが最もはっきりとわかるのが、政府がここ数カ月間に新たに講じた措置である。党と国家の統制を回復し、市場経済や新興富裕層である「ドンジュ(金主)」の抑制を図った措置なのだが、ドンジュたちが苦労して稼いだ外貨を強制的に手放させて北朝鮮ウォン建ての国有債を購入させようという試みは、明らかに、そして予想通り、9月以前の段階ですでに失敗に終わっている。

これで政府が国民からの外貨吸収の取り組みをあきらめたわけではなかった。政府は外貨をそれほどまでに必要としているのである。それがよく映し出されているのが、最近の非公式市場における北朝鮮ウォンの謎の投機的高騰である。

市場の自由化に向けた動きはある

とはいえ、公共部門が実際に物資を国民に届けることができない以上、市場を踏みにじることもできない。「全体的な動きとして、市場の自由化に向けた動きはまだ存在している」と、前述のブラウン氏は話す。「ただ政権は、それにブレーキをかけようとはしている」。

こうした惨状をさらに悪化させているのが、パンデミックだ。国内の感染者はゼロと政権は主張しているが、これを信じる専門家はほとんどいない。韓国のアナリストは、北朝鮮では今年の初めに深刻な流行があったと考えており、その結果、国境はほぼ全面的に閉鎖された。消費財の多くが店頭から消えてしまったことからもこれは明らかで、平壌の特権階級のエリート向けの店ですら、この状態は続いているという。

パンデミックは、自由化や市場改革に反対する人々にとっては都合のいいものだった。「封鎖のメンタリティーは、統制経済を狂信的に信じる政府関係者にはぴったり合っている。特に国境閉鎖に関しては」とブラウン氏は述べる。「これで市場経済は大きなダメージを被り、筋金入りの党支持者にとっては好都合なはずだ」。

中国は北朝鮮をどこまで支援できるか

こうした中、金政権が生き残ってこられたのは、唯一の同盟国である中国が支援して、崩壊を防いでくれたからだ。公式には、中国の統計機関による数値が示すように、2020年の北朝鮮の対中国貿易はほぼゼロにまで落ち込んだ。

だが、日本やアメリカメディアの報道によると、食糧や肥料、エネルギー資源が中国から北朝鮮に相当量流入しているという。加えて、北朝鮮からの輸出量も増えているもよう。石炭や鉱物をはじめとする商品が、非公式に輸出されているというのだ。

ただ、中国の支援にも限界がある。「中国は北朝鮮が破綻しない程度の支援を提供することはできるが、その程度では持続的な成長を実際に助けることはできない」と、北朝鮮に特化した報道機関、NKニュースにも寄稿しているテルティツキー氏はオンライン上で述べている。

ブルッキングス研究所のジョナサン・ポラック氏もこれに同意し、「中国は主要な資源については確約していない」と発言している。「中国が望んでいるのは、北朝鮮が節度ある態度をはっきりと示すことであり、それが納得できるような態度かきたcどうかによって、もっと支援すべきかどうかを決めていくだろう」。

たとえ中国が経済的な影響力を行使しようとしても、北朝鮮政府は過去にも中国の警告を無視することがよくあった。10 月に平壌で行われた大規模なパレードでは、北朝鮮の新型長距離ミサイルや、近代化された軍備が誇らしげに展示されていた。

これによって、北朝鮮には軍事力があり、その軍事力によって現在の比較的平穏な状態がいつ破壊されるかわからないことを世界は改めて思い起こしたし、パレード自体それを意図していたのも明らかだ。

「当然ながら中国は、独自の立場を利用して北への影響力を拡大できるのならばそれが理想的と考えているが、中国には北が不安定化すれば自国の利益にはならないことはわかっているし、経済が完全崩壊する危険があったとしても金正恩氏が中国に服従することはないということも分かっている」と、テルティツキー氏は言う。

それでは韓国はどうか。歴史的に言うと、北朝鮮は韓国にも救済を求めてきた。特に進歩的な政権は支援に積極的だった。韓国の金大中政権は1990年代、食糧、肥料、通貨を大量に送って飢饉緩和を支援した。2008年に保守政権が復帰したことにより、その援助も止まってしまった。

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