トランプ退陣でいよいよ「北朝鮮」がヤバくなる 中国頼みにも限界?金正恩氏はどうするのか

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2021年1月、朝鮮労働党は第8回党大会を開催するが、今回は政権の今後の行方がかかった大会となりそうだ。市場改革に手をつけるのを止め、国家統制経済に戻って、これをさらに強化しようとするのか。バイデン政権に交渉再開を迫り、経済的救済を得るための影響力を取り戻すことを目的に、金委員長は長距離ミサイルや核弾頭の実験に踏み切るのか。

早いうちにバイデン政権を試して様子を見るというシナリオは、世界中のメディアから広く売り込まれてきたシナリオであり、過去の政権交代時にも同じようなことが起こっている。だが、情報に精通した専門家の多くは、国内で起きている危機を考えた場合、それはあまりにもリスクが高すぎるとみている。

「軍事的挑発という選択肢は、容易に取れるものではない」と、韓国のソウル大学で教鞭をとる専門家、金炳椽氏は語る。金委員長は、バイデン政権の注意を引きつけ、北朝鮮を優先順位リストに押し上げることには成功するかもしれないが、「その結果、逆に制裁を強めることになるだろう」(金炳椽氏)。

「さらに、中国との関係も損ねてしまう可能性がある。中国は朝鮮半島が不安定化するのを恐れているので、経済支援を減らし、制裁を強化するよう動くかもしれない。そうなれば、すでに大きな打撃を受けている北朝鮮経済が、さらに大きな打撃を被ることになってしまう」

民衆蜂起の可能性はあるのか

現状維持に固執したとしても、それはそれで問題だという。「金正恩氏の選択肢は非常に限られていると思う。どのシナリオを取っても、リスクが大幅に高まるからだ」と金炳椽氏は言う。

北朝鮮政権は、国民が国家経済から離れ、市場への依存度を高めている現状に直面しているのだ。「現在の国民は、1990年代の国民より積極的に福祉の改善を要求してくるだろう。そしてそれが、金正恩氏にとっては大きなプレッシャーとなるはずだ」。

ただし、専門家らは、民衆蜂起が起きることはないと予想している。「北朝鮮は、民衆蜂起からは程遠いところにある。恐怖政治によって国民は怯えきっているから、蜂起までは考えないだろう」と、ソウルの国民大学校で研究活動に従事するロシア出身の北朝鮮専門家、フョードル・テルティツキー氏は話す。

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