GoToキャンセル補償「旅行会社独り占め」の手口 宿泊施設へ補償が行き渡らない懸念があった

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GoTo事業の一時停止に伴い、観光庁は12月24日までなら無料でキャンセル可能とし、キャンセルがあった事業者については1人当たり2万円を上限に、代金の50%を補償として受け取れることにすると発表した。その後、観光庁は24日になって、無料キャンセル可能日の期限を27日まで延長した。

だが、宿泊施設はある懸念を抱いている。肝心なキャンセルの補償金が得られない可能性があるというのだ。

GoToトラベルは、宿泊を伴う、または日帰りの国内旅行の代金総額の2分の1相当額を国が支援する事業と定められている。ただ、航空券や鉄道の切符を単独で予約するのは対象とならない。そのため、「ダイナミックパッケージ」などと呼ばれる「長距離交通機関の利用+宿泊」のプランを旅行会社から購入する利用形態が大半を占める。

旅行会社から宿泊施設へのキャンセル料は、通常の契約条項からすれば当日は100%、前日は50%などとなっている一方、3〜5日以上前のキャンセルの場合は取り消し料ゼロか、あっても20%程度という例が多い。

宿泊施設に補償が届かない可能性

この前提を踏まえて考えると、今回のGoTo一時停止を受けたキャンセル手続きでは、顧客から申し込みを受けた事業者である旅行会社はGoToトラベル事務局に補償金50%相当を請求するものの、宿泊施設へは通常の契約条項に基づいて取り消し料が支払われないという可能性がある。

数日前のキャンセルの場合は取り消し料ゼロという条項は、「誰かがキャンセルしても別の客ですぐ埋まる」という例年の年末年始のような売り手市場なら問題はない。ある旅館主は「いつもなら、正月にキャンセル料を取るなんて考えたこともない。毎年空き部屋なんてなかったから」と話す。

だが、コロナ禍のような非常時にこのような条項がそのまま適用されれば、宿泊施設にとっては大きなダメージとなる。補償の行方について、旅館主らの懸念は強い。また、知人のホテル支配人によると、今回適用されるルールを悪用する旅行会社が存在する兆しもあったという。

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