アメリカ財務省の本音は「まだドルは高すぎる」 「為替政策報告書」が各通貨に発した警告を読む

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民主党政権はドル安志向であることが多い(写真:REUTERS/Leah Millis)

バイデン次期政権におけるアメリカ財務省の通貨政策に関しては「イエレン氏にかぎって露骨なドル安誘導のような下品なことはしない」というのが既定路線ではある。だが、先の大統領選挙で見せつけられたように、トランプ大統領を支持する層はまだ相当大きい。とりわけ同大統領の掲げてきた先鋭的な保護主義はアメリカにとって必要という声も根強く、慢性的に拡大する貿易赤字を放置した結果がトランプ大統領を生み出してしまったとの政治分析もある。

政治主導によるドル安も警戒しておきたい

勝利演説でも述べたように、バイデン次期大統領は分断を癒し、団結を呼びかけていきたい立場だ。そうであれば選挙で目の当たりにした根強いトランプ支持層も取り込みたいはずであろう。その際、ここ数年高止まりしてきたドル相場を一段と押し下げることで製造業の従事者などにアピールするという一手は十分に考えられる。与えられた職務を愚直にまっとうするだろうイエレン新財務長官もそうした政治的要請を完全には無視できないかもしれない。

歴史的にも共和党政権よりも民主党政権の方が通貨安にアピールしてくるという印象もあるだけに、2021年のリスクシナリオとして「政治主導のドル安」という論点を念頭に置きたいところである。
 

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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