アメリカ財務省の本音は「まだドルは高すぎる」 「為替政策報告書」が各通貨に発した警告を読む
さらに「実質実効相場ベース(REER)で見たドル相場が過剰評価というIMF(国際通貨基金)の判断にもあるように、持続的なドルの強さ(sustained dollar strength)は不安である」との見解を示しており、方向感としてドル安が進んでも水準感としてのドル高が持続していることに不満を抱いている様子が窺える。具体的には実質実効相場が20年平均に照らして「おおむね(roughly)7%高い」としている。
確かにドルの実質実効相場は20年平均を優に上回っており、10月時点で6.5%の上方乖離となっている。ピーク時から調整は進んでいるものの、確かに2014年6月に始まったドル高局面の調整はまだ道半ばであることがわかる。
円は「まだ安い」が本音
個別通貨に対する評価でも見るべき表現はあった。
例えば下半期に入ってから強含みが続いている円に関しては「対ドルで2019年に1%上昇したのに続き、10月末までにさらに4%上昇している。また、実質実効相場ベースでは2019年の1.5%上昇に続いて、10月末までにさらに1.5%上昇している」と基本的に円高が進んでいることを認めつつも、「こうした最近の上昇にもかかわらず、実質実効相場で見れば円はいまだに過去の平均に照らして弱い」と言外に円高が足りないという本音も見受けられる。
しかし、対ドルで最も円安が進んでいた2015年6月、円の実質実効相場は20年平均対比で30%以上の過小評価だった。それが今年10月時点では過小評価は14%程度まで調整が進んでおり、過去5年の動きとしては十分、揺り戻しが進んでいると評価してもよいようにも思える。
ちなみに、報告書ではコロナショックの最中で「traditional safe haven currencies」としての円が評価されたという記述もあった。結局、危機を受けて買われる通貨として円やスイスフランが強いというのはリーマンショック後から引き継がれている事実であり、近年目にする「円はもう安全資産ではない」という評価が極論にすぎることを2020年は確認したといえる。
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