アメリカ財務省の本音は「まだドルは高すぎる」 「為替政策報告書」が各通貨に発した警告を読む
改めて為替操作国および監視リスト入りに関わる認定基準を確認しておくと、①対米貿易黒字が年間200億ドル以上、②経常黒字がGDP(国内総生産)比で2%以上、③一方的かつ継続的な外貨買い為替介入、GDPの2%以上、過去12カ月のうち6カ月間で実施、という要件のうち、2つを満たすと監視リスト対象国に、3つを満たすと為替操作対象国として認定される。
毎度のことではあるが、中国は条件を①しか満たしていないが「アメリカの貿易赤字において巨大かつ不相応なシェアを占めている」ということを理由に監視リスト対象国とされている。なお、この基準に照らせば、いずれメキシコなども同じロジックを適用される可能性はあるだろう。
現状のところ、操作国認定が下されたスイスやベトナムに対して具体的な制裁などが科されているわけではないが、これら小国開放経済からすれば「自国経済が生き残るために為替を操作する必要がある」というのが言い分であり、制裁に対しては全力で抵抗を示すと思われる。
そもそも当のトランプ政権が自国第一主義を掲げているのだから、操作国であろうと、監視国であろうと、指差された国からすれば「言われる筋合いはない」というのが本音ではないか。
「まだドル高」がアメリカ財務省の本音か
今回はドル相場に対する所感が示された『Foreign Exchange Markets』が目を引いた。ここでの議論を総括すれば「2020年のドル相場は下がったものの、まだ高い」というものだった。
2~3月の「悲観の極み」ともいえる時間帯では市場全体でドル調達への懸念が強まり、ドル相場が急騰した。具体的には名目実効相場(NEER)で「ドルは年初来から3月23日までに10.2%上昇した。主要な貿易相手国、ほぼ全部に対して上昇した」と強調している。
しかし、周知のように、その後は状況の落ち着きに応じて一転ドル安相場が定着したというのが2020年であった。だが、この点に関し報告書は「(最もドル高が進んだ)3月23日と比較すれば10月末時点で7.9%下落したものの、年初来の10カ月という意味では1.6%上昇している」と「まだ高い」ことに不満気である。
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