鉄道運賃「コロナ値上げ」実施への高いハードル 収益回復と利用者負担のバランス感覚が必要だ

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運輸総収入が下がり、赤字となればそれを補うために運賃単価をあげるということは制度上可能である。

たとえば、これまで総括原価が150万円とされていた鉄道に1万人の需要があり運賃を150円としていたとする。需要が半減して5000人になってしまったとすると、150万円の総収入を得るには単純に考えて運賃を300円にしないとならない。

その視点で見れば総括原価150万円に見合う運賃総収入150万円を確保するために上限運賃を150円から300円に値上げするということがありうる。しかし、前提となる総括原価は向こう3年間の需要予測と収支予測から算出するというハードルがある。

需要の見極めは困難

つまり、新型コロナウイルス感染症拡大直後の1年間の需要が5000人に半減していたとしても、このあとワクチンが普及するなど新型コロナウイルス感染症に対する予防・治療体制が整うなどすれば回復の見込みがある。

今後需要が5000人のままで推移するかどうか、回復するならどこまで回復するのかの見極めは現時点では誰も予測できない。そうすると運賃認可の基礎となる総括原価の測定も困難ということになる。

もっとも、コロナで失った利益を回復させるために、総括原価の計算についての運用を時限的に直近1年の需要をもとにすることとして限定的な値上を認める、という制度を新たに作るということであれば別である。

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