鉄道運賃「コロナ値上げ」実施への高いハードル 収益回復と利用者負担のバランス感覚が必要だ

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運賃の認可を受ける場合、「適正な原価に適正な利潤を加えた額」(総括原価)を認可後の運賃による総収入を超えてはならない、という枠組みがある(同法第16条第2項)。鉄道事業は始めるにあたって莫大な資本の投下が必要になり、維持をするにも多くの経費が必要になる。

したがって、鉄道事業者は投下資本を速やかに効果的に回収したい。一方、地域の公共交通機関としての役割が鉄道にはあり、かつ、地域独占企業となる場合が多い。そのため、鉄道事業者の自由な運賃設定に委ねていると、公共交通機関としてふさわしくない運賃設定がされる可能性がある。

そこで鉄道事業者に一定の利益を確保させつつ、利用者に過大な負担がかかる運賃とならないものとなるようにするのが現行運賃認可制度である。

認可対象は運賃の上限

認可の対象は個別具体的な上限運賃である。認可を受けた上限の範囲内であれば鉄道事業者は割引運賃、特定運賃など低廉な運賃の設定など自由にできることとなる。たとえば、200円の上限運賃を認可された場合には、鉄道事業者の判断で180円としたり、具体的な通常運賃を200円としたうえで一定の条件を満たす場合には180円の割引運賃としたりすることができる。

上限運賃認可にあたっての基準は1997年から「ヤードスティック方式を加味した総括原価方式」が採用されている。鉄道事業者は総括原価を超えない範囲で需要予測のもとで改定後運賃総収入を想定し、その改定後運賃総収入を得るために個別具体的な運賃額(初乗り運賃額や対キロ制や対キロ区間制などの運賃算定方法に基づいて計算した運賃額)を決めていく作業を行う。

では、コロナ禍で減少した収入を補うために、運賃認可は可能か。

結論からいえば可能ではある。しかし実際に運賃変更の認可を実行しようとした場合、運賃変更の基礎となる総括原価の測定は困難と言わざるをえない。

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