【産業天気図・銀行業】資金需要鈍く利ザヤも薄い、当面「雨」が続く
10年4月~9月 | 10年10月~11年3月 |
銀行業界は2011年3月まで1年間、終始「雨」が続く見通し。
09年度同様、10年度もトップラインの環境は非常に悪い。銀行の本業である融資について見れば事業性資金の需要は乏しく、亀井静香金融・郵政担当相の旗振りにもかかわらず、中小企業向け融資は09年度は前年度比減少だ。こうしたなかで、住宅ローン中心の展開になりがちだが、人口減少地域の銀行ではこれも伸びは高くない。一方、政策金利の2度にわたる引き下げの影響で、今年度は貸出利回りは下がっている。預金金利も下がったものの、もともと金利が低いため、限度があり、預貸の利ザヤが縮小している。それだけではない。保証協会の制度融資で公的保証もバラまかれているので、中小企業に対して信用リスクに応じた金利も要求出来ない状態だ。有価証券での運用もかつてのように外債の高金利や株式の高配当などが剥落し、利回りが下がっている。預金を貸出金や有価証券で運用して得られる資金利益は、一般的には低下している。資金利益が増えたのは、首都圏のごく一部の地域銀行だけだ。
手数料収益である役務利益も、冴えない状態が続いている。個人向けの投資信託販売などは底を打ったものの、リーマンショック前の水準に戻っているわけではない。また、メガバンクなどの大手銀行や地銀の大手は、法人からの外為手数料の低下も響いている。貿易量が減っており、為替ヘッジ取引もその分減っているからだ。法人向けのプロジェクトファイナンスや私募債のアレンジの手数料なども減少している。
政策金利低下の影響は一巡するものの、利ザヤは縮小に歯止めがかかるだけで、改善は難しい。資金需要が乏しいため、一部地域では金利競争でなお、利ザヤの縮小が続くだろう。役務利益も大きく戻るとは予想できない。横ばい程度ではないか。与信費用は引き続き、低く抑えられるだろう。債券売買益を叩き出している大手行にとっては、今期は期待できないと思われる。ソブリンリスクが世界的に意識されるなか、財政が最悪の日本国債の金利が不気味に上昇する場面が増え、買いにくくなるかもしれない。