吉田羊「脇役でも視聴者の心を打つ」彼女の真髄 「黒歴史」「熱愛報道」にも負けない女優の存在感
前半は、圧とアクの強い中国人女社長役の高畑淳子が笑いと注目をかっさらったが、徐々に台頭してきたのが羊姐さんだ。
殺された佐藤の姉役で、広末と内田を怪しむ。それこそ刑事ばりのしつこさと執念で追及していく。殺人を犯しておきながら、悠長でのんびりしているふたりとは対照的。途中から「完全犯罪を暴け!」と応援するような気持ちにもさせた。そして、最終回で慟哭する羊姐さん。
思わず「羊が吠える!」と見出しをつけちゃうほど、迫力のある見せ場でもあった。ラストに微笑むシーンは物語の結末をいかようにもとらえられる表情で、ドラマ全体を振り返るにふさわしい余韻を残したのだった。
もうこのあたりにくると、CM出演も多数。そば焼酎雲海にエネオス、ポカリスエットなど、羊姐さんの清涼感も豪快さも茶目っ気も数多の人が認めるところへ。
そういえば、ジャニーズアイドルとの熱愛が報じられたのもこの頃。好事魔多し。「よりによってジャニーズ……」と思わんでもない。謎の海外留学、所属事務所との契約終了など、ある種の「禊」のような時期も。でも羊姐さんはくじけなかった。いや、羊姐さんの実力を認めている人々が手放さなかった。中井貴一とか三谷幸喜とかね。そこから再び躍進が始まる。
「恋愛市場現役」がいちばんの適役
「中学聖日記」(2018年・TBS)では、彼女を中学生男子に取られた町田啓太を愛でるバイセクシュアル上司、「まだ結婚できない男」(2019年・フジ系)では阿部寛にうっかり恋をする独身弁護士、「凪のお暇」(2019年・TBS)では建築業界で働くガテン系シングルマザー、そして「恋する母たち」(2020年・TBS)では若い部下・磯村勇斗に性欲をぶちまけてしまうキャリアウーマン。立て続けに恋愛ドラマに出演し、がっつりと爪跡を残している(私の心に)。結局、羊姐さんは「恋愛市場現役」の役が最も輝いて見える、という結論に達したのだ。
しかも、だ。「ほのかな恋心と隠せないときめき」「すれ違いや行き違いに一喜一憂」などの淡くて甘い胸キュンモノではないことが多い。主に、大人の過ち、淑女の達観、生き物としての根源、幸福を殺す恋愛といったキーワードが思い浮かぶような業の深い恋愛モノ。
劇中では凛とした佇まいで毅然とふるまうも、切なさや悔しさ、寂しさもしっかり伝わってくる。なにより情と温度がある。達観していようが、渦中であがいていようが、その弱さは素敵だなあと思わせてくれるのだ。
末永く恋愛市場にいてほしいし、その先にある複雑な感情の曼荼羅を表現し続けてほしい。いつかヒツジストを名乗れるよう、今後も眺め続けていこうと思う。
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